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書評:「ノルウェイの森」著者 村上春樹【ネタバレあり】

購入したのは半年ぐらい前かもしれません。ずっと放置していたものを、イギリスに行く前に処理したくていっきに読みました。

 

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

 
ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

 

 

長編としては「1Q84」「騎士団長殺し」と読みましたが、その2作に比べると格段におもしろいし、純文学っぽかったですね。多分その2作は不思議な世界みたいなものが出てくるからライトノベル的な部分があると思います。

 

ノルウェイの森」は1969年を舞台に直子とワタナベ、緑といった女性達との交流流や大学生活を描く小説です。直子は精神疾患を患っており、ワタナベは彼女のことを心から愛している。冒頭から直子が死んだ後、長い年月を経たところからスタート。ワタナベの喪失していく様を描きます。

 

複数名の精神疾患患者とその自殺、恋愛模様が描写されますが、とにかく切ない。今に続く村上春樹の人気にもうなずける面白さだと思います。なんというかとにかく主人公の喪失感が伝わって来る作品です。

 

太宰治とかの時代の小説を読むのに近い気がする。1960年代末の情景を描くからだろうか、とにかく最近っぽさがない。文通とかもそうだし、やはり昔の小説を読んでいるような感覚がありましたが、1987年リリースの作品です。

 

もし村上春樹未読の人であれば、まず最初に読むべき作品なのでしょうなあと思います。

 

以下気になった点をつらつら。

 

村上春樹の代名詞にもなっている表現「やれやれ僕はXXした」みたいなのがかなりの頻度で出てくる。あ、これだわってめっちゃ思った。先に読んだ2作品ではあったかどうかの記憶が曖昧。

 

登場人物が結構狂っている人ばっかりでてくるのだけど、その中でも緑という女性だけはそれなりにまともな感情の持ち主で好感が持てた。

 

やっぱりというかこの頃からセックスしまくってたんだね。とにかく性描写が多い。おまけに詳細でねちっこい。コミカルにSMについて熱弁する緑なんかは、「騎士団長殺し」で出てくるおっぱいにやたらこだわる少女っぽくて、昔からこの手のキャラが出てきたんだなあと思った。

 

永沢という、すごい頭が良くてモテる男子大学生が出て来る。彼は外務省に入るぐらいめちゃくちゃすごいという描写があるが、どうしてもちびまる子ちゃんの永沢くんが出てきて笑える。ちびまる子ちゃんのTVアニメが流行ったのは90年ごろだから、「ノルウェイの森」が後から出てたら、永沢という名前じゃなかった気がする。

 

文通と固定電話を主な連絡手段としている時代背景に描いてる作家が、最新作ではちゃんとスマートフォンやインターネットが登場させることに驚く。主人公と村上春樹自身が同年代で、1969年には20歳だったわけで、日本の成長期を全て見てきているんだなあと感慨深い。

 

村上春樹も70歳近くであり、この年代の人は戦後日本の全体像を知っているんだなあとしみじみ思った。僕なんかは90年代以降しか知らないので。バブル期の実態すら知らない。昨今の作品より「ノルウェイの森」は純文学してますね。とても楽しめました。

 

ここまで書いて「色彩を持たない多崎つくる〜」のことをすっかり忘れていたことに気づきました。どんな話だったか全くわからないぐらい印象にねえなあ。

 

とにもかくにも「ノルウェイの森」は現在の村上春樹までに通ずる作品だし、おもしろいので読んでも損はないかと思います。