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書評:「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」著者 J.D.ヴァンス、 訳 関根 光宏【ネタバレあり】

 実はイギリスに来る前にKindleで読み終えていたものです。

以前から注目されていて読もう読もうと思っておりました。

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

 

 

ヒルビリー・エレジー?アメリカの繁栄から取り残された白人たち?

ヒルビリー・エレジー?アメリカの繁栄から取り残された白人たち?

 

 

かなり有名な作品で、ベストセラーにもなっていたので内容を知っている方も多いかもしれない。アパラチア山脈の麓あたりの地域出身の貧困な白人たちのことをヒルビリーと呼ぶ。著者はラストベルトと呼ばれるオハイオ州貧困層からイェール大学のロースクールを卒業するまでにいたった人物。人生を振り返りつつアメリカが直面する貧困について語ります。

 

日本の貧困とも共通点があったり、逆に重ならない部分もある。なぜラストベルトは貧困になったかというと、著者の祖父母世代にはオハイオには大きな工場がたくさんあって、みんながそこで働き家を建て子どもたちを育てたが、国際競争の結果その地域から工場がなくなった。少し余裕のある人々は、やがてそこから去りました。ところが、まとまったお金やそこから出ていく知恵のない人々はラストベルトに縛られ、ドンドン貧困になっていく。

 

工場がなければ仕事はなく、仕事がなければお金がなく、お金がなければ教育が十分に行き渡らないという悪循環です。そんな中で、ある種の暴力的な環境に身を置き、何度も何度も父親が代わり、ドラッグで蝕まれる人々を見てきた著者は、祖母の教育と海兵隊に入ることで人生が変わっていきます。

 

日本との違いはドラッグが蔓延しているということでしょうか。もちろん日本人の中にも薬物中毒者はおりますが、地域全体でそうなるということはあまりないようです。共通点も多々あります、例えばラストベルトのよろしくない学校では勉強に打ち込むタイプは軽蔑されたりするということ。これは頭の悪い学校によくあるかもしれない。ガリ勉とかお利口ちゃんとか言われたりしますね。

 

当然まともな教育がなければそこから抜けだす知性や知恵は身につかず、その地域での埋没が決まってしまいます。さらに、悪くない時給のパートタイムの仕事があってもそういった人たちは勤務態度が悪く、バックレたりトイレからこもってでてこないこともあると書かれてましたが、バイトあるあるだなあと思ったりします。最低限の責任感を持つというような素養がないのでしょう。そういったところは日本にも良くあるなあと思っていました。

 

気になったのは著者の年齢が僕と2歳しか違わない点です。僕としてはインターネットってもんがあった気がしてて、僕なんかは中学生ごろからネットを使ってて、高校の頃はネット中毒だった。まあラストベルトではそのような良い物はなかったのかもしれないし、都市部との格差なのかもしれない。今現在アメリカの都市部と地方の情報格差はインターネットが埋めてくれるんじゃないかと思いましたが、スマホが若者に行き渡った現在でも、ろくすっぽ検索ができない人々もいるわけで案外そこまで格差を縮める効果はないかもしれない。

 

著者のヒルビリーな人々に対する眼差しはある種の「しばき体質」的な部分というか、少しの努力ができないという点に嫌悪を感じられるようなところもしばしばあり、かと言って子供の頃からそれなりの階層にいた人々に対しても、思うところはあるようでどちらにも所属していないというエレジーを感じます。

 

イェール大学に通うような人々は、親の年収が1000万円ほどあるような家庭ばかりのようですが、それでも中流だと思っているぐらいで、さらにとんでもない金持ちがゴロゴロしているというからこそそのような認識になるようです。

 

この2つの階層の衝撃的な格差を経験した著者の体験記は貴重です。これを見ると日本はまだマシかなと思える程度ではあります。ですがどんな国もやはり貧富格差の上にいる人と下にいる人は似ているところがあります。

 

そんなことを気づかせてくれる良作であるかと思います。