こうして僕らは腐る

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どうしてあなたの英語留学は失敗するのか

フィリピンのゼブ島、ニュージーランド、オーストラリア、ロンドン、カリフォルニアにニューヨーク。99%の日本人の脳裏にある「いつか英語ができるようになれば」

 

「これだからヨーロッパに比べて」「アメリカのIT産業のすごさは」「オーストラリアは時給が高くて」「ニュージーランドはすごく時間がゆっくりしているのに日本は」

 

SNS常時接続社会になって目立つようになった海外比較。ガチ勢も出羽守も今が全盛期と言わんばかりの情報発信ぶりだ。そしてこのブログも。

 

日本の将来を悲観してか、人権上の自由を求めてか、あるいはたくさんの給料と休暇を求めてか。予算の範囲でその一歩を踏み出す人は後を絶たない。だが彼らがその後、理想を手に入れたという話はチャレンジャーに比べてあまりに少ないのではないか。語学留学をしてそれっきり、あるいは海外就職をしてみたが苦労の連続。それどころか、語学留学自体がそうでもなかったという人も。

 

どうしてあなたはパッとしないのか。

 

語学留学で目的の国の空港から予定のアパートなりシェアハウスに辿り着くと込み上げる新しい人生の一歩への感傷。「見ていろ、自分は極東の島国だけで留まらない国際派の人間になるんだ」とか「差別まみれの日本でなんか生きていけない。抜け出すぞ」なんて想い。

 

ほとんどの留学生は特に金持ちというわけではないだろう。ワーホリで働くことが前提か、あるいは少ない貯金をはたいて慎ましやかな生活を送る。

 

最初の1週間は恐ろしく楽しい。そこがマニラであれロンドンであれアメリカ西海岸であれ、だ。自分なりに準備はしてきたつもりだが、英語で英語を学ぶという慣れない授業と思ったよりも聴き取れない英語に少し凹む。

 

だが、日本とは全く違った街の風景に感銘し、無限に広がる世界がそこにあると実感する。この感覚はまさにRPGの序盤のようなものだ。まだ知らない世界がたっぷりとあってどこに行くにも初体験。どのような物語が展開されるかは自分にもわからない。授業が終われば、毎日観光へとでかける。これも勉強のうちだ、とあなたは思う。

 

1ヶ月も経てば学校で友人もできる。週末には飲みにも行くだろうし、カフェで話をしたりもする。もちろん拙い英語ではあるがお互い様だ。様々な国家とバックグラウンドを持った人たちに刺激を受ける。最高の日が続く。友達の英語力が意外に高い、自分は劣っているんじゃないかと思うこともあるが、まだまだ先は長い。

 

2ヶ月経って、少し心が変わり始める。最初は英語を聴き取るのも難しかったが慣れてくる。意外と成長しているんじゃないかと思ったりする。

 

ある時、あなたは電車で話しているネイティブ達や、カフェでの現地人のおしゃべりに耳を傾ける。全くわからないのだ。留学生同士なら何とかわかる、学校の先生もなんとかわかる。だがネイティブの発音が全く理解できない事に気づく。あなたは自信が打ち砕かれ、すこしナイーブになる。

 

生活環境にも段々不満になる。季節感は日本と違う、肌荒れだったり体調を崩したりするが、薬なんかも日本とは勝手が違う。さらに日本食が決定的に恋しくなってくる。来て1ヶ月ぐらいなら上がりきったテンションで感じなかった異文化へのストレスがボディブローのように効き始める。現地で手に入る日本食は明確に違うものだ。

 

同居している外国人達にも不満が高まる。留学生が住める物件は大したものではない。壁も床も薄く物音が気になる。共有キッチンは片付けない人がいたり、汚してそのままの時があったりとイライラする。冷蔵庫に賞味期限切れの食べ物をいつまでも置いていたり、自分のものが食べられたりすることもあるかもしれない。わけのわからないタイミングでなる火災報知器にもうんざりしたりするときがあったりもする。

 

そんな時に思う。「日本だったらなあ」

 

3ヶ月。中の良い友人たちとのおしゃべりをするも上達してんだか、してないんだかわからない。相変わらずネイティブのストリート英語は難しい。短期留学の人たちがぼちぼちと抜けたり、新しく入ってきたりする。英語の奥深さを知ってしまい、自分が国際派になるには相当な時間がかかるんだろうという実感が湧いてくる。このくらいの時期に身近な観光地はすでに行き尽くしてしまう。金を使って遠出するぐらいしか選択肢はなくなる。だが贅沢するほどのお金がないならそれもできまい。

 

あなたはワーホリで来て、働いているかもしれない。とはいっても最低賃金の誰でも出来る仕事、主にショップ店員やウェイター・ウェイトレスが役割だ。働いていれば英語力は上がるかと思ったが意外とそうでもない。ルーティンワークなのである程度覚えると広がりがないのだ。客との会話も大抵ワンパターンだ。それどころか、毎日8時間も仕事をすると疲れて勉強する気もなくなる。あなたは焦り始める。もし3ヶ月で留学が終わるとすればそれは良いことかもしれない。英語力に自信がつくことはないだろうが、思い出としてはキレイなまま終わるのだ。

 

ところがあなたにはまだ留学生活が残っている。長期留学をする留学生は限られているので、いつメンと固定的な学校生活になる。短期留学生はいつの間にかいなくなる。ネイティブとのコネクションはほとんどない状態が続く。恋人でもない限り片言の英語を話すあなたに興味を示して英語を教えてくれるモノ好きは中々いない。

 

あなたが学校のみの留学なら「もし働いていればきっと英語を話せるようになるんじゃないか」と思うだろう。ワーホリなら「働かずに語学学校で勉強すればもっと上達するんじゃないか」と思うだろう。だが実はどちらも厳しいのだ。海外ならではの勉強をしたいと思うかも知れないが、実際に必要なのは孤独な勉強なのだ。映画を英語で見て、英語のラジオやニュースを聴き、英語長文をなるべく読むようにする。日本でもできるがこれが最も効くのだ。そして英語を豊富に理解できる人、ネイティブと話すしかない。

 

4ヶ月、5ヶ月。それでもあなたの英語はどの程度上がっているのかがわからない。以前よりも遥かに出来ているはず、それは確かだ。大抵のことは何とかなる。英語での手続き文章もまあ理解できる。ラジオも新聞記事も留学前より理解出来るようになっただろう。

 

ところがあなたは逃げ出した先が楽園でないことを知ってしまったのだ。拙い英語でありとあらゆることに対応するのは非常にストレスがあり、ネイティブの集団には混ざるだけのコミュ力はない。あなたを理解するのは常にアジア人だ。

 

文化的差異が徐々に重量を強める。最初は楽しかったのに重荷となってくるのだ。やがてあなたはマラソンのようにしんどい思いを延々と繰り返すことでしか英語力を身に着けられないことを悟る。ストリートで何とかできるようになるまで3年かあるいはもっとかかるかもしれない。現地人にウィットのある英語でしゃべるにはそれぐらいは必要だろう。

 

そうこうしている内に半年が経った。初めての日に感動した街の風景はごく平凡なモノになってしまったことに少しばかりの悲しみを覚える。日常になったのだ。日本にいた時の夢は微かな現実になる。もしこの国に住むとしたら、どうなるだろうか。想像できるようになるのだ。

 

レストランの店員のような仕事で働きながら、良いとは言えない住環境で生き続けるのだ。病院は日本のように優れたものではなく、街中の衛生環境も日本より悪く、治安も良くない。この国で過ごすのか?終の棲家を見つけるのか?

 

ここは最高の国ではないのか。そうかもしれない。いやだが、他の国へ行くと桃源郷があると言えるのか。わからない。いやきっとないんだろう。素晴らしい生活を手に入れるにはつまるところ個人の有能さによって良い給料を得るしかない。誰でも出来る仕事でやっていくことはできないどころか、日本より少し悪い生活水準になる。

 

あなたは素敵な思い出を手に入れた、しかし失意の内に留学先を去ることになった。何ごとも手に入れる前に想像するのは楽しいのだ。あれやこれやと頭の中で楽しむのと現実に直面することは全く別物だと知る。少し大人になる。

 

日本に帰ると、それはそれで疲れる。忙しない仕事環境に無言の同調圧力、権利意識の低さ。英語がわからないことで感じなかったストレスに気づく。日本語だからこそ大量の情報を処理できる、それが故、些細なストレスを大量に受けるのだ。

 

「あっちにいるころはもっと自由だったな」

 

差別的な有名人がお説教を大上段でやる姿勢さえ鼻につく。政治家が増税ばかり気にかけて、経済コントロールできていないことに将来を悲観する。国民は低所得者同士、弱者同士で争っていることにも虫唾が走る。ありとあらゆることが時間通りだが、そこから外れるとイライラしている人たちが目につき始める。

 

「あっちではそんなことはなかったのに」

 

だがあなたは国家のいいとこ取りが成立しないことも既に十分わかっている。

 

こうしてあなたの「理想の留学」は失敗に終わったのだ。

 

それはとても素晴らしい日々だった。

しかしながら、そこに桃源郷はなかったのだ。