フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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書評:「大阪―大都市は国家を超えるか」著者 砂原 庸介

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 ロンドンに行ってから、大阪のこと何も知らないなあなんて思った。

30年以上住んでいるのだが。で、大阪の今の政治を知ろうと思い立ってそれっぽい本を探していたところ目についたのがこれ。

作者は神戸大学大学院法学研究科教授だそうだが、この本を書いた当時は大阪市立大の准教授である。

大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

 

 

書かれたのが2012年と最新の情報は得られないが、そもそもが大阪市政中心とした歴史の話なので問題はないだろう。

 

おおよそ1900年台前後から現在にいたるまでの大阪府のターニングポイントなどを紹介していく構成になっている。生粋の大阪人でありながら全然知らんことばっかりで発見があった。

 

例えば今の大阪市と呼ばれる範囲は昔はもっと小さかった。発展途上の過程で拡大していったという歴史がある。原因は税金の徴税などにあったり、人口の急増であったりする。

 

その他にも東京以上の人口と経済を戦前に誇っていた時期があるなどちょっと面白い。

 

だが1970年代からは東京一極の流れができあがり、ほとんど今につながる歴史が確定していることも読み取れる。横山ノック太田房江などちょっと懐かしくなる名前も取り上げられている。ちなみに太田房江は全国初の女性知事だそうで。

 

橋下徹元知事に対しては公平な視点があるというか、極端なバッシングなどに走っておらずよい。稀有な政治家と褒めている。

 

大阪市政上かなりページを割いているのが關一市長という人物だ。この人が今の大阪の原型を作った政治家という風に紹介されている。この人が東京以上の経済規模にした政治家なので高評価も当然といったところだが、やはり政治家がすごいということが、都市や地域の発展には不可欠だということを認識させられる。

 

1900年前後に活躍した政治家には傑物も多いが、大阪にも玉があったということか。

 

橋下徹も8年ほど大阪の政治に関与しただけあって、その政治力への評価はあるようだ。大抵の知事は4年かそこらでいなくなるし、カリスマがめっちゃあるわけではないからね。ノックや太田房江の時代に比べれば橋下時代も良いのかもしれない。

 

大阪の近代史上では關一が最も重要な人物であり、この人を学ぶことが大阪の未来へのヒントになるかもしれない。

 

僕は学位を持ったインテリの書く本は参考になると常々思ってきたが、やっぱり教授になるぐらいの人は煽ったりせずに公平に語るなあと関心した。

 

こと橋下・大阪維新時代の政治は煽りあいになりやすい。だがこの本を読めば少し冷静な観点で大阪の歴史を見れるように思う。