こうして僕らは腐る

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IT業界問題と貧困、労働環境を切り分けて考える

反響がすごくあった。

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ここで書いたのは、日本のIT業界はブラック体質ではあるが、もしそれを修正したいのであれば業界は様変わりし、あなたとあなたの会社は消え失せるかもしれないよ、ということだ。これがブラックを容認すると捉えている人が結構いた。

 

僕は欧米のような学位=スキルという前提で業界を組み立てる方が正しいという考えだ。その方が人々は納得しやすい。だがそうなると日本のエンジニアは業界に就職さえできないよ、それでもいいなら移行すべきだよね、という意見を述べた。これも生存バイアスと捉えられた。日本型社会の多少のメリットを述べつつも、やはり欧米的やり方の方が納得感があるだろうと記事にしたつもりだった。

 

僕は果てしない断絶を感じた。ブコメで分かったのは業界内における「勝者」「敗者」の間で認識の始まりが全然違うことだ。

 

わかりやすく説明するため、日本型IT業界での「敗者」とは、さんざん残業させられて体を壊したり、鬱になったり、スキルを得られず業界から退場した人達のこととしよう。「勝者」は特に問題なく仕事として納得するぐらいの給料・環境を手に入れた人たちとしよう。「勝者」「敗者」の間には今現在進行系で不満が溜まっているIT産業の労働者もいる。

 

「敗者」からしてみれば、IT業界は恨みしか残っていない魑魅魍魎たる地獄だし、「勝者」からすれば今でもその場所で利益を得ている戦場だ。ここに大きな隔たりがある。

 

鬱になったり体を壊したりした人々は業界を嫌ったり憎んだりしているだろうから、それらを正当化する意見は受け入れられない。僕の意見も「お前が負けただけだぜ?」程度にしか思っていただけないのかもしれない。今なおこの業界で利益を得ている人々からすれば僕の意見はそれなりに頷いていただけたように思った。

 

なんにせよ「敗者」的な人々の意見はIT業界というより、日本的雇用と経営に対する批判というべきかもしれない。IT産業では顕著であるが、丁稚奉公で使い倒すというやり方が日本では蔓延している。

 

その中で悪質なのは安い給料で使い倒すというブラック企業の存在だろう。これは何もIT業界に限った話ではなく、中小・零細で売上が少なく特別な技術も何もない企業に見られる。日本は決められた仕事をするために契約をするという習慣がないからか、いろんな仕事を労働者にさせていいという曖昧な認識がまかり通っている。

 

冒頭の記事でも少し触れたが、アメリカだとシュレッダーにかけたり掃除をしたりする担当者が雇われているし、契約業務とは関係のない、例えばITエンジニアに焼きそばを作らせるようなことをすれば下手すれば裁判になりかねない。

 

日本では手の空いた人が雑務をやればいい、その方が経費がかからないじゃないか、とか思っている経営陣が散見される。年末の大掃除を社員でやるなんて会社はまだまだある。

 

こういう日本的風習が、スキルにもならない作業を割り当てられるという現実につながっている。雑務担当として雇われていないのだから、それはできませんという考え方はあまり通らない。転じて、気に食わない社員や使えない社員に雑務をさせるというようなやり方を取って自主退職に追いやるということも横行している。

 

だがこれはIT業界の問題と言うわけではないのではないか。契約と労働に対する根本的な認識が日本の経営者と違うのだ。社員は給料を払えば何してもらってもいいみたいなところが出発点になっているので、自分はエンジニアとして雇われたのだという理解の人とは対立するだろう。

 

もう一つは労働基準法を守らないという経営者の問題だ。何故か日本では「作業が終わってないんだから帰るな」というようなことをのたまう経営者が多いように思う。これが日本全体の過労につながっている。

 

要はIT業界の問題とされて語られる部分は日本全体の病気だと言うことだ。(そしてまさに日本の縮図なのだ)

 

だが欧米ならどうだろうか。エンジニアだろうと掃除夫だろうと専門家として雇うという側面が強いのでそれ以外のことはやらなくて良い。エンジニアがゴミ出しをやらなくて良いし、掃除夫はバグを直さない。僕はロンドンで生活している間、毎週土曜に部屋のゴミを取りに来る人がいた事に驚いた。彼らは週に一度フラットの共有スペースを掃除し、各部屋のゴミを出してくれるのだ。ちなみに家の真ん前にゴミ袋を入れる大きな箱がある。例え家の前にゴミ出し用の大きな箱があろうと、専門家が雇われている場合僕らはそれをしなくていいのだ。

 

だがコレにも問題はある。すでに冒頭の記事で書いたように専門性が高まれば高まるほど学位が必要になって、その業界への入り口は狭くなる。IT業界はその典型例で大学でコンピューターサイエンスを学ばなければならないが、年間300万はする米英の学校で借金を背負って入る人が大勢いる。(ドイツやフィンランドは無償。スウェーデンも自国民に限って無償)

 

そういったもんだから高給を取れる専門職は、働きながら学ぶなんて悠長なことは許されない。高卒になった時点で職の範囲は狭くなる。そして簡単な仕事は移民との奪い合いに加え安月給である。

 

安月給ならマシだろう。ルンバのような機械が発明された結果。かなりのオフィス掃除担当が削減できたことは想像に難くない。簡単な仕事は機械が代用するようになると、あっと言う間にその「専門性」を喪失する。結果待っているのはクビだ。日本型雇用ならここで配置転換という手段を取ることもあるが、欧米ではそのような生易しい現実はない。一旦クビになって、また入り口から入れという考えだ。

 

そんなわけで経験の浅い若年失業率は日本に比べて高い。おまけに冒頭の記事のコメントにもあったが、インターンと言う形で無給でこき使うなども社会問題化している。実質奴隷だ。

 

日本の雇用問題に変化を求めるのは正しいだろう。職務に応じた契約で雇いサービス残業はさせない。それは素晴らしいことだ。

 

だが僕はその先にある未来がもっと恐ろしいものではないか、と想像するのだ。ロンドンでは若年ホームレスが溢れていたし、失業の結果鬱になるなんてこともザラだ。雇用の流動化は生活の不安定化を招くだろう。残業させられないなら機械で代用、という経営判断で大量の失業者と貧困がもたらされるかもしれない。

 

今の時代はありとあらゆることが高度化して、学問が必要なっている。ローテクな日本の方が一応のところ労働者の受け皿を作り、曲がりなりにも自由なお金と自立した精神を与えているのではないか、と。

 

もしそこで日本型の曖昧で理不尽な経営環境を刷新したならば、高度で合理的な日本社会が出現するかもしれない。果たしてそれは鬱や体を壊したあなた方の理想社会だろうか、と僕は疑っている。

 

実際に日本より仕事内容と雇用契約を一致させるアメリカはドナルド・トランプを生み出したわけだ。日本よりも経済発展しているにも関わらず。自由で余裕のある国とは到底思えない。

 

ここまで書くと、またもやならば日本型のブラック企業を野放しにしろというつもりかと怒られる。そうではない。そうではない、が僕は曖昧な日本が問題を抱えながらでも若年層や貧困層の受け皿を生み出していると考えているのだ。(新卒一括採用なんかはその典型例だ)

 

どちらの社会がいいかは今の僕にははっきりといえるわけではない。ブラック企業をドンドン取り締まった方がいいと思うし、実際にある程度そういう方向には進歩していっている。未熟なりにもプレミアムフライデーだとか労働生産性だとかがテーマになっているわけで希望がないわけではない。

 

労働環境の議論がなされる時「無能者に仕事も給与も与えない」というパンドラの箱を開くのではないだろうか、その可能性を考慮せずに意見をしている人々が多いように思った次第である。

 

そのような危惧とて壊された人にとっては響かぬ強者の戯言かもしれないが。

 

 

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

 

 

ヒルビリー・エレジー?アメリカの繁栄から取り残された白人たち?

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