フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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書評:「労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱」著者 ブレイディみかこ

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 僕の憧れ、ブレイディみかこさんの新作を読みました。

 

英国で結婚して保育士として暮らし、昨今ではジャーナリスト的な活動もしておられる方です。主に英国労働者階級や日本の貧困層などにも取材した書籍がある。

 

この方は書いている内容から優しさがにじみ出ているので良い。

 

今作はBrexitにまつわる労働者階級の意見を取材しつつ、100年間の英国の歴史を振り返る内容となっており、歴史の勉強にもなる1冊だ。

 

保育士をしているだけあって、英国議会の予算の削減などがあるとダイレクトに筆者の周りに影響があることを実感できるようだ。

 

Brexitブームとトランプブームの違いや、筆者の交友関係へのインタビューなどは他の大上段からの論評と異なり読み応えがある。

 

インタビューされた人々の考えはそれぞれだが、Brexitに賛成していても近所の中国人に嫌がらせをしていた若者に抗議したオジさんは印象的だ。

 

ポーランド人夫婦は英国で暮らせるのに、EU以外の国と結婚したイギリス人の妻は英国に入ることができず(婚姻ビザは最近厳しいらしい)子供とskypeで国外からやり取りをしている英国人の状態に疑問を呈したりする人など、日本では報道されないことが書かれている。

 

以前はバングラデシュから来た移民などはイギリスに骨を埋める覚悟があったが、EUからの移民は祖国の住宅ローンが返済されるまで英国経済を利用している奴らだ、と断じる人もいておもしろい。

 

トランプブームとは違って移民嫌いというわけではなく、イギリス人が割を食っていることに対する不満や不安などがあるようだ。

 

第3章ではイギリス政治史100年を振り返っており、サッチャーやブレアなどだけではなくメージャー政権などマイナーな内閣についても書かれており興味深い。

 

ブレアの時代は労働者にとっては良かったらしい。上に引き上げられた時代だったそうな。コービンが好きな息子と嫌いな父親などの意見も面白い。

 

この本を読むと英国の政治に対する多様性や奥深さがわかる。

 

イギリスに興味のある人は読んでみて損はない一冊となっている。