韓国映画は久々に見た。
町山さんが絶賛しているから、そんなにいいのかよってことで映画館に行ってみた。
結論から言うととてつもなく良かった。
ソウルのタクシー運転手が戒厳令の中の光州にドイツ人ジャーナリストと一緒に向かってそこで歴史的事件の目撃をするという筋書き。
最初は学生運動に懐疑的だったマンソプも光州市で行われている軍の虐殺を目の当たりにして徐々に政府の不正義を感じるようになる。
この映画のいいところはほのぼのな雰囲気から始まってドンドンえげつない現実を突きつけるテンポだろうか。視聴者も光州事件のことを知らない人もいるわけで、タクシー運転手のマンソプと同じ気持ちで時間が流れていく感じが良い。
歴史映画って冒頭にちょっとした説明があったりするけれど、それもなくシナリオ進行とともに何が起こっているかが明かされていく。
現代よりちょっと古い韓国って感じの空気感だけど、貧困すぎないような庶民の生活が映し出されるところにノスタルジーを感じる。
光州市民の親切心や素朴さも軍の弾圧と相まって悲しみが増す。特に光州市のタクシードライバーのテスル、学生のジェシクもとてもいい脇役ぶりを発揮していて良い。田舎者っぽい光州市民が命がけで戦う姿が涙なしには見れねえ。軍側の冷血な司令官達も見ていて恐怖を覚えるぐらいで本当に演技がうまい。
以下ネタバレ。
最終場面のカーチェイスシーンも最高だし、どうしてもマンソプ(連絡先を聞いたがキム・ソボクという偽名で書かれたため連絡できなくなった)に会いたくてしかたがなかったドイツ人記者ピーター本人のメッセージがとても良い。
ピーターは映画公開前の2016年になくなっており、映画では生きていることになっているマンソプも実は映画舞台の4年後に死んでいたという事実がある。ピーターはずっと探していたんだけど見つからなかったのは死んでいたからなんだな。
実在する映画の主人公が死んでいたことがわかったのはこの映画の大ヒットのおかげで、マンソプの息子が名乗り出たからだった。
そういうところになんというか現実って不思議だよなって思わせる。
9点/10点