フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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顧客が本当に求めているスケーラビリティ

プライベートで勉強しないサクラエディタ開発おじさん - フロイドの狂気日記

サクラエディタおじさんがいるプロジェクトを思い出すと、エンジニアが求めているスケーラビリティと、顧客が求めているスケーラビリティにはマリアナ海溝ぐらいのみぞがありそうだと気いた。


とある裕福なBtoB企業で彼らは潤沢な開発費を出せるだけのお金があった。
2-3人で3ヵ月納品などというものではなく1年サイクルで20人以上という規模であった。
それを継続できる財務力なのだ。


だが彼らはITで儲けているわけではなく、工場に納品する製品で巨額の金を手に入れている。
不景気だのと言われる企業群の中で右肩上がりを維持しているんだから素晴らしい。


そんな会社の依頼で作るソフトウェアというのは、工場までの納品からその後のサポートまでのバックグラウンド処理である。


実は彼らは金があるので昔からIT化をやってきた。
最初期はIBMのサーバーを利用して、そしておそらく90年代以降はマイクロソフトSQLServerを、最近追加した機能ではMysqlを使っている。そしてそれぞれに開発言語と設計と仕様とワークフローがあるのだ。


それがバックグラウンド処理に混乱をもたらせていた。
突き詰めてしまえば彼らの要求は「データ管理をする」という一言に収まる。
社内でこれ以上ワークフローの分断は不可能、抜本的な作り直しなくしては拡張も無理となったとき、僕らの出番がやってきた。


しかし開発を始めて打ち合わせをすると彼らの中の憎悪を見て取れた。
ソフトウェアを使うのはセールスとサポートの部門である。
彼らの仕事の大筋はここ何十年も変わっていない。納品して不具合などのサポートをするのみ。それにもかかわらずソフトウェアは分断され使いづらい。
挙句の果てにそっくり作り変えて「今までの仕事」をぶち壊そうとしている。


こいつらは一体何の仕事をしているんだ、である。
不具合があれば工場へ飛んで行って修理し謝罪し汗をかいている間、空調の効いたオフィスで優雅に開発をしていて、唯一の仕事であるパソコンで作るなにがしらの業務はいまいちで、こちらに操作を一から覚えさせようとしている。
仕事を増やすだけのどうしようもない存在じゃないか、と。


セールスやサポートはパソコンの大先生じゃあない。
一から使い方を覚えるのはストレスだ。


そんな彼らが我々に求めているスケーラビリティはシンプルだった。


・ボタンの位置やソフトのデザインを頻繁に(たった5~10年で)変えてほしくない
・その上で法律の変更や製品ラインナップの修正に対応してほしい
・持っているパソコンで使える


彼らから言わせればたったこれだけの要求だ。
今までさんざん高級なIBMマイクロソフトの製品を購入してきたのに、このざまなのか!という怒りに似た感情。


エンジニアのスケーラビリティを持たせるとは、仕様変更・拡張を簡単にできるように最新技術を取り込むことを目指しがちだ。
ところが、ここ20年以上の実績として最新技術を取り入れ続けた結果は莫大な予算をかけての作り直しとセールスマンたちへの負担増加である。


ついにお偉いさんたちの「ずっと使い続けたいだけ」というご要望を優先し、社内のIT担当が業務フローの流れを完全に把握、フレームワークなしPHPjQueryのみの画面コントロール、そして社内サーバーでソースを管理するというイケてるエンジニアが裸足で逃げ出す環境となった。
(これで他社のバージョンアップで動かないという事態はかなり避けられる。
セキュリティ対策はありあまるお金でエンジニアにやらせればいい。
少なくとも外部要因でコントロール不可になることはない。
PHPのメジャーアップデートだけがネックだがそれも数年は持つし、それだけなら対応も可能だろう)


彼らは学んだのだ。
最新ソフトウェアやバズテックを限りなく導入しないことが結局として予算の削減になる。
それ以上に、社内での不平不満の抗議のほうがやっかいごとなのだ。
大半の社員にとっては安定したルーティンでお金をもらう方がありがたい。


本当に注力すべきは製品開発であって、業務フローのIT化に予算をかけ続けることではない。
そのために業務ソフトはシンプル構成にして、セールスマンたちにフォローをさせるほうが、究極的なスケーラビリティや万能を求めてシステム更新し続けるより安上がりで満足できる。

 


そんなところで働いて何が楽しいんだ?個人の成長を捨てるのか?
そう言われたところで、彼らからいただけるお金と安定は最新スキルを求めるweb制作会社よりもはるかに高いのだ。
そういう現場に出会ってしまうと、一体誰のためにキャッチアップをするのだろう?
顧客が求めていないのであれば、僕らの業界全体でやっていることは賽の河原で石を積むことに他ならないのではないか?
というむなしさが残るのだ。


いやしかし、新しい技術を誰かがバズらせるおかげで、各社のインフルエンサーが新しい仕事を作り、僕のような末端エンジニアまでおこぼれが来たりすることもある。
だとしても、安定した古臭いBtoB企業を探し出す方がトータルのコスパが良いとは言えないか。
余暇を仕事のことを切り離して楽しめるチャンスをこのご時世にいただけるんだから!


2020年代サクラエディタで開発してもお金がもらえるんだったら、そういう人生もありじゃないだろうか。


って僕の中の老人悪魔がささやくんだ。