フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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「この素晴らしい世界に祝福を!」に見るおっさんノスタルジー

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サイクル的にアニメを見たくなる時期がある。
普段は追っていたりしないので、深夜アニメ界では有名な作品も見てなかったりする。


最近ではずいぶん古いがシュタゲ、今年始まっていたシュタゲゼロ、SAO、攻殻機動隊ARISE、Reゼロ、そしてこのすばを見終わったところだ。


ここ数年でかなり有名だった深夜アニメを消化した。
今期はゴブリンスレイヤーとSAO3期は見ている。


最近流行りの異世界転生ものをずっと見ていると、2008年ごろの学園ものが流行りまくっていた時期がずいぶん懐かしい。
雨後の筍のように「学園」「ツンデレ「日常」「部活」が大流行していた。


ところが最近は「異世界」「チート」「ハーレム」「引きこもり・ニート」と設定流行が変わっているようだ。


「このすば」については奇をてらっているな、という印象がありつつも正当な流行の継承者のようにも見える。
個人的には最近見た中ではおもしれえなと思った部類。
良くも悪くも頭を使わないし、不愉快な部分がほぼない楽しいコメディとなっている。
Reゼロはネットで叩かれるように主人公のうざい部分がやたらフィーチャーされて、話によっては途中で消そうかな、と思った時もある。かつて流行った学園ものにせよ、どこか深刻なイベントがワンクール内に起こったものだが、「このすば」は真顔になるストーリーが少なくて良い。


10年前はハーレムではありつつも男キャラの数でバランスを取っていたような気もするが、最近の流行りは男性主人公一人に女性大量というパターンが多いようだ。そこに時代の変遷を感じる。ヒキニートという現実ではどうしようもない属性で転生するのも2010年代っぽい。実質的に無能力者っていうね。これはやっぱりとある禁書の上条さんの影響なのだろうか。


「このすば」は、それぞれキャラが立っていて、バカ、ロリ、マゾ変態というそれぞれの特徴を極めたようなキャラと自堕落系主人公で構成されているが、多少のしつこさはあっても不愉快さがないので映画も楽しみにできる。


サブキャラもおっとり魔女、良心的なデュラハンや商売人土くれ仮面と魔王軍側のキャラなのにシリアスさがないところがとても良い。


なんでこうも惹きつけられるのか、と思ったんだけどもこれはおっさんノスタルジーなんだな。
かつてハルヒなんかが高校生のころいてほしかった斜に構えた女子で、学園内でドタバタコメディしたかったなあと思わせるノスタルジーなんかがあったように、今度は全く別の日常でそういう風に生きたいと思わせる舞台になっている。

 


深刻なトラブルを解決できる能力を欲している若者層はSAOのような正統派チーレムを見るのだろう。
それはある種の若さ故の傲慢だ。それが手に入れば楽しいだろうなあという希望を持っている若さである。
だが僕のようなおじさんになると、無能でもいいんだよと囁くような、こういう楽しい日常を可視化されると弱い。


もはや若くてかわいい女性に接点をもつこともできず(お金を払えば別だが)、女性関係と言えば結婚するかしないかの2択から入る付き合いを好むと好まざるとに関わらずせざるを得ない年齢となった。


純粋に楽しい日常というのは過ぎ去ってしまった。仕事はそれなりにこなせるが単調で男だらけで、安定はしているが程よい刺激さえもはや望めない、ちょっとした老化も感じられるようになった。


32歳にもなると、友達が連れてくる女性も口に出しはしないが婚活ガチ勢だったりして、ちょっとお試しにできる年齢じゃねえなあという状態。なんだかんだで「どこで」「どういうふうに」「どうやって」生きていくかの決意を求められている気さえする。


そんなわけで、とりあえず今日はクエストにいきますかあ、と従順な女衆とキャッキャウフフしながら日常を過ごしている姿を見せられようものなら、そりゃくぎ付けでしょ。


それにメインヒロインは愛嬌あるおバカ娘、ロリ魔女は幼い娘、マゾ騎士はセフレみたいにも見えるので、都合のいい女を持っている2児の父親的な様相さえある。なんだかんだでツボをついてくる。大人になっていない子供おじさんのツボをゴリゴリついてくる。


そう考えると僕も含め世のおじさんたちやあるいは若者にも責任回避の精神みたいなものがあるのだろうねえ。
それがヒキニート主人公と都合の良い女性陣という設定を馬鹿ウケさせる。まあハーレムに関しては昔ながらだろうが、無能者でもっていうのが最近のポイントなんだろう。


そもそも古代昭和の価値観「女は愛嬌、男は度胸」だとか「女は男を立て、男は女の面倒をみる」みたいな価値観が崩壊した時点でこの未来は確定だったのかもしれない。男たちが日々感じているのは責任だけを負わされる現実なわけで、何のメリットもなくね?というおぼろげな空気である。


今や働けばいい時代は終わり、家事や育児もちゃんと手伝うオールマイティ型メンズが求められている。
精神的安定と生活の自立、清潔感、それに気遣いまで求められた今、メンズの劣等生達はリアル生活に祝福できないということなのかもしれん。おまけに社会が仕事の保証さえしてくれない時代だ。


「このすば」は頭使わない、魔王軍も街の人たちもいい人だらけで、ゆとり的優しい世界である。
尊いなあ尊いよなあと思いながら、朝起きたら真顔になって絶望する生活に戻るのだ。


はい。
ヒットした深夜アニメの中ではお勧めです。
枯れた生活のおじさんにはなおお勧めです。