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映画『ボヘミアン・ラプソディ』、そして1991年のブライアン・メイのインタビュー記事を題材にたどる史実との相違 - YAMDAS現更新履歴
話題になってるんだから見るしかねえだろと思って、日曜日に行ってきた。レイトショーだったが客入りは前3列を除いたらほぼ満員。映画自体はかなり楽しめた。感想としてはクイーンのニワカが増えるんだろうなあ、というものだった。一般受けは抜群だろう。
2004年。当時は何を出しても高視聴率のキムタクドラマにクイーンの曲が採用されたことがあった。そのころに出したベストアルバムはミリオンヒットし、若者だった僕らの周りもクイーンを聴く人が増えた。18歳だった僕は、高校生になることから洋楽の有名どころを一通り聴くを実践していたからすでにクイーン知っていた。口には出さないが、ドラマが流行る前から知っていたんだぜ、なんて思っていた。当時流行りに飛びついてクイーン好きになった人も今ではファン歴15年というかなり長い歴史を持っていることになる。時が経つのは早いものだ。
脚本回りに批判が集中していて、まあ確かにと思う評論も多い。とはいえ何といってもクイーンとフレディのパフォーマンスが素晴らしいので脚本が微妙なところがあっても許せるぐらいの映画になっている。
脚本がダメ、ご都合主義の改変を入れている、ゲイ描写が偏見的といろいろ言われているが、いたしかたないというのが僕の意見だ。
映画の脚本を面白くするためには登場人物のキャラと、起承転結のあるストーリーが必要だ。ところがクイーンのメンバーはフレディ含めて真面目でいい人でまともだ。唯一フレディ・マーキュリーのゲイ属性だけが当時としてはスパイスになっただろうが、今となってはごく平凡なステータスだ。
さらに下積みらしいものがないというか、デビューして2年以内にはヒット曲を出していて、貧乏暮らしってのもそう長くない。ストーリーは明らかに成功してからが長いし、メンバーもいい人だし、対立しても他の成功したバンドに比べれば穏やかで理解がある。波がないのだ。唯一の悲劇がフレディの死に向かうまでの日々だけ。そのほかは本当に安定した成功話が続くので、せいぜいフレディの乱痴気騒ぎぐらいしか書くことがない。結末だけが悲劇だけど、それも当時としては仕方のない病気だしね。
同時代のバンドなら、劇中でアルバムを引用されたピンクフロイドだと、ロジャー・ウォーターズの左に寄った思想や頑固さ、客につばを吐くエピソードだとか、メンバーをクビにするぐらいの対立がある。
セックスピストルズなんかだったら社会への反抗やジョンライドンとシドヴィシャスのマジキチエピソード盛沢山にできたりするだろう。
クイーンはそもそも大卒の頭のいい集団で、理解力があってエリートで仲が良くて、フレディが死ななければ今でもバンドしているだろうと思う。人間的には素晴らしいのだが、映画エピソードとしては無難すぎてつまらないし調理しようがないのではないか。
冷静に考えると編集済み人生ダイジェスト付ライブ映像という趣になったが、それでも一般層に浸透するぐらいのパワーはありそうだ。
実際に映画館で見るべき映画としては本当に傑作だ。
個人的に好きな「39」や歌詞にしか言及されていない「spread your wings」とかが映画で歌われなかったのは残念だけど、有名な曲は一通りそろっていて良かった。
クイーン初心者にはピッタリの映画ではなかろうか。