フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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ブスでも女は股開けばいいから楽だよな

 

それに比べて男は厳しいよね、キモくて金のないおじさんはどうしようもないから。


というようなことを聞くたびに思い出す人がいる。元カノの元カレである。ややこしい表現になったが、何年も前に付き合っていた彼女の元カレは典型的なキモくて金のないおじさんだった。少なくとも僕から見れば。彼のことを仮にA氏と呼ぶ。

 


同じ職場の新人だったが、彼女は彼氏持ちであることを公言していた。それでも僕が誘えば二人で食事に出かけたりしたのは、A氏との関係がある程度不穏だったのだろう。彼女から見せてもらった写真では秋元康に似ている小太りの中年男であった。そして聞けばせいぜい手取り20万で当時40手前で彼女よりも10は離れていた。彼女はA氏と結婚したがっていて度々ほのめかしていたが、A氏はなんとかはぐらかしているという状態だった。だからこそ、僕と二人でデートしていたのだろう。


今よりはるかに若かった僕は燃えに燃えた。
A氏よりも若く長身で痩せていて収入も高いのに、彼女の男でないなんて理屈に合わないだろう?と。


A氏の魅力はなんなんだと聞いたところ、「癒される」というところだったそうだ。とにかく物腰穏やかだそうだ。家では話さなくても、お互いが違うことをしていてもいいんだと。教養があり、僅かなお金でたまにジャズコンサートに行くのが趣味のおっさんは、職場の女子にもモテたらしい。僕と同じ会社に務める前彼女はA氏と同じ職場にいた。別の女性社員からA氏をめぐり因縁じみた絡まれ方をされたこともあったそうな。


会ったことはないが物腰やわらかい癒し系のような雰囲気が特徴だったらしい。若かった僕は40手前にもなって年下の女性をキープする悪党にしか思えなかった。結婚する気があるのかないのか、直接聞くように彼女にけしかけ、そしてA氏ははっきりとそれがないことを告げた。彼女は僕と付き合うことになった。


時は流れ僕らにも破局が訪れた。僕は結婚しようと思ってたし、お金も時間もたくさん使った。だが、付き合い始めてからの僕はかなり素っ気なくなっていたように思うし、おそらく人格の悪い面を見て結局彼女から別れを切り出した。


不意打ちのように思ったが、今ではそれも仕方ないかと思える心境だ。別れてしばらくして彼女は結婚し、子供もできた。


やがて僕はA氏と同じように付き合っている最中に彼女と後の夫が出会っていたことを知る。A氏と僕はお互いリスクヘッジをかけられつつ付き合っていたのだ。


だがA氏が最後まで関係継続の主導権を握っていたのに対して、僕は哀れにも見切りをつけられた男だ。A氏よりもはるかにお金などを使える立場だったにもかかわらずだ。長く続けるのは性格の一致が決め手になるのだなあと思った。


今となっては若さも少しずつ削られ、A氏と年が近くなるにつれ思い出は少しばかり希望に変わっている。40手前の小太りの金のない男が、10も下のルックスの良い彼女をキープできたのだ。もしかしたら、僕にもなんて。


聞いた限りは常に無欲であるが故の柔らかい雰囲気というのが魅力らしいので、これももって生まれたものかもしれない。一緒の空間にいるだけでいいと思わせるってのも僕には不可能にも思える。彼はたくさんのものを抱えられないタイプの人だったのかもしれないと考えるとそれはそれで孤独だ。


だがキモカネおじさんが話題になり「女はいいよな」と当てこする意見を見るたびに「A氏のような例もあるんだよな」と思い出さずにはいられないのだ。そしてキモいという感情は所詮主観なのだ、とも思う。