フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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書評「ファクトフルネス」見えない真実と先進国の問題点を暴く

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休日使って読み終えたのはいいけれど、正直な感想として先進国の普通の人々にとってはあまり役に立たないな、と思った。著者はスウェーデン出身の医者であり、「善人ガチ勢」と言ってよろしい人だ。

 

アフリカでその地域唯一の医者として子どもたちを診察したり、エボラ出血熱の流行した時にも地域に行って医療活動をするような、ちょっと只者ではない。そんな人が書いている本だからこそ説得力がある。

 

内容は先進国の人々が階級や職業を問わず、わかっていない真実についてまとめてある本といったところだ。例えば「少しでも電気を使える人々は世界に何%いるか」だとか「ワクチンを摂取している子供の数は何%か」とかそういった質問を様々な国でいろいろな立場、ダボス会議に出席するエリートを含めて問いかけていき、どれくらい正答率があったかを調べている。だいたいはチンパンジー以下の正答率(3択で問いかけているので、山カンをはっても33%になるはず)だったことを示し、そういう人々にファクトを突きつける本といった趣である。

 

この本を読むと、思ったよりアフリカが発展しているだとか、内戦地域を除けば男女平等や電気の利用、ワクチンの広まり、子供の教育などが進んでいることがわかる。白人エリートはアフリカが発展していないことを、彼らでは先進国になれない、それは「彼らと我々」が違うからだと主張する人もいるようだ。ところが実態はそうではない。たくさんの国々が最底辺の状態を抜け出して中所得になっている、とこの本が示す。

 

僕個人の感想だが、全編に渡ってスウェーデンエリート感が鼻につくのだ。著者は現在のスウェーデンをかなりいい物と見なしている。そしてアフリカだろうとインドだろうとそういうふうになれるし、そのような方向性になっているということだ。男女平等は広まっていて、医療の機会があり、教育と人権が世界中で受け入れられていると。その上著者は単なるエリートだけでなく、圧倒的な善人で危険な場所にも行く人物だ。金銭欲があるわけでもない。家族もいて大事にしている。そういう人が世界の真実を示すことにちょっとモヤっとした感じがあったのは否定できない。

 

もう一つは、確かに最底辺から抜け出す人が増え続けていて世界は良くなっているということは理解できる。しかし先進国内の格差や、賃金下落にはほぼ触れていない。作者は現在問題になっているのは絶対的貧困ではなく相対的貧困だという。相対的貧困についてはあまり触れられていない。

 

例えば90年台後半や00年台に比べて日本の実質賃金は下落し続けている。自由に使えるお金は減り続けているが、もちろん先進国らしい暮らしはできている。それでも不満がたまる。これもファクトだと思うが、これについて希望的真実を示してくれはしない。とはいえコンゴケニアで活動する人に言わせれば贅沢な悩みなのかもしれない。

 

世界はより良い方向に向かっているというのは、あくまで均質化、途上国の発展についてであるのみだ。先進国の今後についての希望ではない。だからこの本を読むと発展途上国の希望を理解できても、先進国の悩みの処方箋としては参考にならないのだ。

 

途上国の人間が豊かになり、先進国で新幹線に乗って旅行する日が来る、ということに実感がわくとしても、その時先進国の人々が豊かであるかどうかはわからない。貧困化して立場が逆転するだけではないのか、と思ってしまう。

 

そのため、確かにアフリカとかに希望はあるけど、俺達にゃあ関係ねえべ。ビジネスマンは発展途上国と侮らずに、欧米以外でも商売をしましょうね、ぐらいのものにしか思えんかった。実際に日本は発展する東南アジアにも近いのでそちらをターゲットにするべきなのかもしれない。

 

日本人的にはあんまり嬉しくない本だった。

 

 

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