フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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書評「ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く」ラストベルトの実情を描く良作

 金成記者という人が朝日新聞にいて、トランプが大統領になる1年ほど前からアメリカで取材を続けている。この人の記事は読み応えがあるので、ほとんどそれだけが目当てに朝日新聞のweb版を契約したほどだ。

 

このルポもkindleで購入した。最近は買って放置している本も多いのだが、これは勢いを持って読めた。どうしてドナルド・トランプなどに投票するのか、そしてラストベルトの人々がなぜそうしなければいけないと思ったのかが明確に書かれている。

 

アメリカ人はああいう差別主義的発言なんかも冷静に見ていて、「女性を馬鹿にする発言が責められてるけど、女性だって男を馬鹿にする。ロッカートークはそんなもんでしょ」的なことを言うインタビュアーの女性など印象に残る人が多い。

 

一貫して彼らは経済状況に不安を覚えていて、細けえことはいいから経済どうにかしろ、俺たちの町を救ってくれ。そんな事を言っている。日本と違ってアメリカはでかい。だからオハイオの田舎町で生まれると、そこから抜け出すのは難しいようだ。青森の田舎者が東京に行くのとはわけが違うのかもしれない。誰も彼もが差別主義者を支持しているのではなく、何とかして経済をやってくれと希望を込めていたことがわかる。前回はオバマを支持して今回はトランプに入れたという人もいた。

 

さらにヒラリーが「嘆かわしい人々」と言ったことについても詳しく書かれている。資金集めパーティで金持ち相手に発言したことが貧困層やラストベルトの人々の反感を買った。トランプ人気もさることながら、ヒラリー不人気も問題だったのだ。

 

ラストベルトの人々がどのように暮らし何を思ってきたかが詳細に書かれたこのルポは日本人記者の著作としては最も真に迫っている気がする。このあとは3年後を描くルポも読むつもりだが楽しみだ。

 

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)