フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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家族の全盛期

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父親が姉の家に来て孫を見ている。父の日だったため兄弟からのささやかなプレゼントを父に渡した。ぶっちゃけ僕は姪っ子に対しての方が金を使っている。父は1ヶ月ぶりぐらいの訪問だったので、姪っ子はすでにおじいちゃんの顔を忘れて、ひたすら泣いていた。知らない人が自分のテリトリーにいることが気に入らないらしい。僕の顔は覚えているらしく、抱っこしても泣かないでいてくれる。それでも寝起きは凄まじく不機嫌で、姉も手を焼いていた。

 

父と母の関係は冷めきって、お互い会わずにいるし別居しているし、夫婦仲は長年の不和と不一致で完全に破綻し、子供という共通の保護対象が巣立って時間がたった今、もはや役割を終えていた。しかし両親とも子供との関係は良好で、お互い孫を見て目尻を垂れさせる姿は微笑ましくもある。

 

家のローンだとか子供の養育費だとかも終わり、つまり借金やツケがなくなって両親ともに年金を受け取れるようになっている。働いてもいる。健康問題は今の所なく、認知症やその他もろもろもなさそうだ。つまり、これが家族の全盛期なんだな、としみじみ思った。

 

そりゃ全ての家族が円満とは思わない。毒親への恨みを愚痴るアカウントは枚挙にいとまがない。虐待などもたくさんあるだろう。だがそういった例が多数派だとも思わない。40年50年と夫婦家族円満なのは難しいかもしれない。それでも、どの家族にも全盛期、良い思い出、すばらしい日々があるのだろうと思う。

 

子育てに必死だった少年期と違って、まさしく今僕らの家族には自由と自立と安らかな時間が流れている。父も母も煩わしいことから全て開放されて、まさしく今が最高の時間だ。姑小姑、親戚づきあいも全て失せた。まさしく想像しうる限りの自由を手に入れている。年金が足りないぞ、と言われる不安な世の中で、僕の両親はそれなりに逃げ切ってくれたと思う。僕が歳をとった頃よりはずいぶんマシだろう。認知症や低収入で恐怖を味わっている人たちもいるわけだ。

 

今後30年以上に渡ってドンドン苦しくなる日本で、自分の両親はなるべく逃げ切ってほしいと思う。安らかな生活と死を迎えてくれれば、僕の生活も束縛されずに済むのだから。幸い自分の面倒のみを見ればいいのであれば、辛くても不安はない。子供がいるとなると生活と将来への不安は比ではないだろう。老後に2000万だか3000万の金を用意しろ、年金はもう終わりだ、現実を見ろと言われ、ネットでそれへの反発を見ていると、家族がいることの負担と地獄は背負えないなと思う。

 

だから今の僕ら家族の豊かさが心底輝いて見えるし、それが失われる日がくるかもしれないことが恐ろしいと思う。