フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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技能実習生に思う貧困日本ゆえの搾取

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月6万円の過酷労働、病気で半身不随 日本恨んだ実習生 - 2019参議院選挙(参院選):朝日新聞デジタル

 

古い家のあちらこちらでガタが来るように、昨今の日本では以前から言われていた「ぼんやりとした不安」がリアリティを持って具体化しているように思える。徴用工問題を取り上げるまでもなく、昔から貧困な者や能のないものは搾取される側であった。しかし人権は進歩していく世界で、貧困が人権を押しつぶし始めたようにさえ見える。日本は移民が極端に少ない社会だったため、彼らの扱いをうまくやる制度がない。それどころか、当の日本人さえ搾取されがちな世の中で、「内の人間」でさえない移民たちに世間が優しくあろうはずがない。

 

もともと経営者や上級市民層には法の力が及びにくい日本で、若者が減り、アメリカのメガカンパニーとの熾烈な競争、高齢者予算が逼迫した故の税金の上昇など、3重苦の中で企業も運営せねばならないわけだ。その結果どうなったか。7payの対応を見れば分かる通り、社内競争を勝ち残った経営者でさえ現代のテクノロジーや社会的対応を学習するのが難しいということなのだ。競争を買ったお偉いさんでさえそれなら、その他の中高年層について述べるまでもないだろう。再教育で今のテクノロジー社会についていくのは恐らく不可能だ。となると若者をどんどん仕入れるしかないが、本当に優秀な若者はGAFAなどアメリカのトップ層が目もくらむような高級で刈り取っていく。日本の頭の悪い経営者の、手取り25万でこき使いたいとういう傲慢な妄想を打ち砕く現実だ。

 

優秀な若者は取れず、中高年層は時代遅れになり、税金も高額になっていく社会で手を出すのは搾取である。持てないものを徹底的に搾り取る。オートメーションでテック企業にかなわなくても、人件費を徹底的に圧縮できれば延命措置にはなるだろう。その究極形態が技能実習生だと思わなくもない。

 

この前は愛媛の今治タオルで、それより前は岐阜の白菜農家などでも話題になった。だがそれとて、地方が限界に来ている証拠なのだろう。愛媛にミカンとタオル以外の仕事があるのだろうか。タオルが売れなければ代価の仕事があるわけでもない。全国で売れる物はほとんどない。そこでなんとか稼ぐしかないが、若者はみんな都会へ消えていって戻っては来ない。そんなとき、悪いブローカーが借金漬けにした発展途上国の無垢な若者がやってくる。いくらこき使っても逃げはしないぞ、と。人手も足りないし、ちょうどよく奴隷を連れてくる業者がいる。バレさえしなければ上前をはねた分だけ、懐が潤う。なに、自民党政権が認めている制度なんだし、お上公認なら安全だ。

 

そんな風にして、戦後日本が手に入れたアジア圏で珍しい人権国家の地位を金に換えていく。はした金である。今治市が人権と引き換えに手に入れた収入は、東京で稼ぐIT企業群には遠く及ばないだろう。一体どれほどの価値があるだろうか。しかし地方ではそれさえもないのだ。仕事がない、売るものがない、人手がない。観光地としてもちょっとハズレにあると厳しい。なんにもないが生きて行かねばならぬ。

 

テック企業の頭脳には足りず、かといって貧困に甘んじることもできぬ人たちが、善意を失うと搾取が始まる。芥川龍之介羅生門がごとく、食っていくためには奪わねばならぬということなんだろう。

 

今後の日本ではそういう事が増えていくだろう。金もなく、世界に勝てる頭脳もなく、税収もなくなれば、戦後日本が封じ込めてきた非情さを取り戻すしかない。そうやって進歩の歴史を売りさばいて糊口をしのぐしかない。そんな国家になってしまったのだ。