フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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7payが僕らに与えたもの

少し古くなってしまったような話題で、もう決着がついて飽きらてしまったが思うところを書いてみようと思う。

 

かつて7payという天下のセブンイレブンが満を持してリリースしたQRコード読み取り、スマホで支払いができるクールなアプリがあった。蓋をあけてみれば、未だにFAXを使うIT音痴の日本人らしく致命的なセキュリティホールの肥溜めのようになっていて、案の定悪辣な不正利用者の餌食となり、セミよりも短い寿命でサービスを終えた伝説的アプリである。

 

庶民はただでさえQR読み取りで支払うなんちゃらペイにうんざりしているのだが、高齢社長らが何の勉強もせず(2段階認証って何ですっけ)、あからさまに無茶な納期と仕様でバターン死の行進を演じた結果、案の定日本人経営者のポンコツぶりと、高齢経営陣のIT音痴ぶりをさらし、消費者の不満の高まりと不名誉だけを手に入れたのだった。

 

やっぱ大日本帝国って最高だわ。

 

とはいえ7payが何ももたらさなかったわけではない。これは極めて残忍な話ではある。コンビニ業界といえばオーナーをしばきあげることでノーリスクの利益を手に入れているわけだ。日本中に展開された店舗から看板料を取ることで稼いでいるわけで、オーナーこそが利益の根幹だと思う。その血と汗の結晶を7payというクソアプリに突っ込んだわけだ。で、誰が得をしたか。

 

IT業界とエンジニアだ。

 

エンジニアは世界的に不足していて、日本でもすでに取り合いになっているぐらいではあるが、なんちゃらペイの開発は当然ITエンジニアがしているわけで、これが乱立すればするほどエンジニアが必要になる。LINEやソフトバンクはある程度内製化しているとはいえ、外注している部分も多いかと思う。こういう上位層(立場的な意味で)がクールなアプリをリリースするぞ、と予算を取ると対抗馬が現れて貴重な貴重なお金を湯水のように突っ込み始めるのだ。

 

どうやら東京本社のお偉い方々は、アイツがやっているから俺もと言わんばかりに手を挙げはじめるらしい。どうせ孫正義の名声に嫉妬したりしている社長たちが、アイツができるんだったら俺にもできる、とチャレンジするわけだ。ビッグウェーブに乗りそこねるなと言わんばかりに予算をとり、エンジニアをかき集める。大企業の殿上人の組織に在野のエンジニアが取られていくと、末端にいるヘボいITプロジェクトにも人が足りなくなる。その結果僕のような場末のフリーエンジニアにも仕事が選べる環境ができあがるというわけだ。

 

僕はここに諸行無常を感じる。単価が急騰することはないが、嫌な仕事はいくらでも蹴れるというのは心理的安全性そのものと言える。セブンのオーナーが貧窮問答歌を詠むかたわら、左うちわで仕事を選ぶ環境が手に入れられる。それもこれも世にはびこるパープリン経営者たちが、IT業界に金を突っ込むおかげだ。そのアプリ必要ですか?と問いたくなる代物はたくさんある。だがそれでもプログラマを雇わずにはいられないのが21世紀なのだ。

 

今起きているのは、全ての労働者の利益をIT業界に移転するという気の狂った社会だと言える。どれだけコンビニオーナーが増えても1人の人間が普通に働いて得られる利益というのは限度がある。コンビニ大手の経営陣はオーナー達を好条件にしてやるインセンティブがない。だがもしクールな7payを成功させることができたならリターンはあっただろう。QR支払いだけじゃなくて、ITというのは億の投資に対して、数十億のリーたんが得られる可能性さえある。だからこそプロジェクトに予算をつけるのだ。

 

元はと言えば末端のプログラミングなぞできぬブルーカラーを動員することで儲けている業界さえも、それで得た利益はすべてIT業界に投資という名目で流れ込む。エンジニアは仕事が増え、フリーランスの仕事はよりどりみどりというわけだ。ありとあらゆる業界で効率化のために、オートメーションのために、クールなアプリ作成のためにエンジニアを必要としている。それをうまくやればさらなる利益、株価の上昇で役員報酬も上がる。

 

不平等でクソな世の中だなと思う。ブルーカラーができる労働が限られているからこそ、経営陣はそこを金を生むものではなく削るべきコストとみなすようになっている。そうして一度作れば電気とメンテナンスだけで動き続けるプログラムや機械は低コストで利益を生み続ける。

 

本来どの業界でも中級や下級レベルは稼げない。だが僕のようなクソ雑魚プレイヤーでもその他の労働者より遥かに収入と自由を得ている。ありがたいと思う一方で、これは新しい格差と搾取階級の登場じゃあないかと感じる。

 

なんちゃらペイって社会に必要なもんだろうか。一つあれば十分ではないか。それでも殿上人の人たちは競争にさえ勝てば投資に見合うリターンがあると踏んでいるのだろう。そうして彼らが無制限にばらまくお金を、本来なら地味な労働者に分け与えたっていいはずのお金で僕は飯を食い、旅行に行き、家族にプレゼントを渡すのだ。

 

彼らの貧困を見て見ぬ振りをしながら。