フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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元上司から電話が来たら

 

ある日、最後に勤めていた会社の上司から電話がかかってきた。勤務中だったがとりあえず電話にでた。僕の仕事はもはや終わりかけで、大きなバグもほとんどなくなり、休み明けにどんな仕事をするべきか迷っているほどだ。一日のんびりとバグつぶしをしてもする仕事がなくなってきて辛い。そんなわけで定時に上る前にかかっていた電話に出た。

 

僕は今まで長らく会社員生活をしてきた中で、嫌われることはあっても好かれることはあまりなかった。その上司は例外中の例外だった。そうでなくても僕は以前の会社で顔を合わせていた人々との関係をどんどん切っていくタイプなので、社会人に出てからの関係はほとんど持ち合わせていない。大抵のひとは大したコネクションも実力も世話するだけの余裕もないんだから。余程仲良くない限りはお互いいなくなってもかまいはしないのだ。

 

時折、仕事頑張っているか、とLINEをしてくる元上司T氏も電話をしてくることは少ない。受けてみると、飲み会の最中に僕の話題になったという。勘弁してくれ、と僕は思った。T氏は僕がフリーランスになってから初めて付き合い始めた派遣会社の営業担当と飲んでいたようだ。その営業担当はいい人だっだけれど、常に2社挟んでさらに上流をかませる仕事の紹介になっていて、中抜きが増えるのにうんざりした僕は営業会社を替えた。おかげで収入は上がったが、営業担当だった人とは疎遠になった。

 

僕としてはもう終わった関係の人々だったのだが、元営業担当は「色々あったけど、また仕事するときはよろしくおねがいします」と言ってくれた。まあ嬉しくはある。しかしこの人手不足のときにそう言われても、苦しいんだろうな、としか思えない。僕の方からはもはや仕事をくれとは言わないだろう。今の営業会社は大阪でそれなりにパイプがあって中抜きはその一社のみで済ませられる。今の営業会社でさえ早め早めに仕事を提供してしまおうという非常に忙しない状況らしく、ウェットな関係が嫌いな僕はなおさら元上司と近い場所で仕事をしようとは思わないのだ。

 

元上司Tの部下でもあり女性営業の人もいた。Mさんは僕が社員だったころも営業だった。「君は営業泣かせだったよ」などと電話越しで言う。僕は気に入らないことはすぐに文句を言うタイプだったし、仕事もあまり良い腕ではなかったのでクレームまみれだった。若い頃の日記を見せられるような居心地の悪さを覚えた。今となっては思い出だ。そもそも僕はこのビジネススタイルをやめようともがいているわけで、親交を温めるという気分にもなれない。しかも僕のスネ傷を知っている人々とはとてもとても。

 

久々に元いた会社のHPを覗いてみる。会社情報は更新され、今年の所属社員は60人を下回っていた。僕がいた頃は非常に上り調子で、僕が入った頃は30人ほどだったメンバーも辞めるころには120人を超えていた。それがこの人手不足、売り手市場のIT業界で彼らもまた人の確保に手を焼いているのかもしれない。

 

まあそうだろうな、とは思うけれども。もはや思い出の1ページに過ぎないのだ。だってこの業界はとっくの昔に下降硬直していて、正社員になるメリットはほとんどないし、どの会社だろうと所属したり出世したりする意味なんて雲散霧消している。だから顔なじみとか、コネクションとかほとんど意味を持たないんだな。それどころか失敗したりしたときに愚痴られ易いぶん、損とさえ言えるかもしれない。

 

いずれにせよ良き時代は過ぎた。そうして己の嗅覚のみで良い案件を選んで体を壊さぬように、ほそぼそと飯を食っていくしかないことに変わりはあるまい。