ここ数年で見た中で圧倒的に良いドラマだった
1シーズン6話、1話30分、3シーズンで終了
超絶愛妻家のトニーが癌で妻を失ってからの生活を描く
妻を失ってから誰にでも毒舌で突っかかるようになってしまったトニーが無料新聞(イギリスでは道で配られている)の記者として働きながら、トラウマと鬱を治そうとしながら悪戦苦闘する毎日を映す
一見重いテーマに見えるが、すごーく軽いノリで楽しい
イギリス制作、イギリス架空の街タンベリーの最底辺近辺のワーカークラスがテーマ
脚本家や監督からの
「カッコいいUK?はっ!ダウントン・アビーやチャーチルの伝記でも見てな!」
というメッセージをひしひし感じる
出てくる登場人物全員がどこかしらクズ、というか絶妙な底辺感を出している
キャラが濃すぎる、そこが魅力だ
これを見てイギリス暮らしに憧れる人はいないと思う
キャスティングの見た目もブサイクか、イケてるとは言い難い中年ばかりだ
誰彼問わず突っかかるクズ野郎になったトニーという主人公以上に誰も彼も狂ってる
「食べすぎる同僚のめちゃくちゃいいやつレニー」「地球平面説とIDを信じて進化論を否定する同僚キャス」「鼻で笛を吹くデブの子供ジェームスとその母」「ゴミ屋敷で暮らす、やべえ男ブライアン(こいつが一番やばい)」「ホームレスの配達員パト」「怠惰な精神科医」
まともなのも少数はいるが、基本はどうしようもない底辺なんだよな
この絶妙な底辺具合というのは見ていただかないと理解できない
トニーの仕事はインタビューして記事を作るのだが、対象は本当に些細な理由で記事にしてほしいと注文する地元の人々だ。
「家の壁にできたシミが有名俳優に似ている」「デブな旦那が自分を8歳の娘だと言い出した」「長生きしたから女王陛下からメッセージが来た」「ポストに形が似ている犬のクソ入れボックスに手紙やはがきを出し続ける男」「同じ整形外科医院で整形を失敗しまくる女性」
なんだろう、絶妙にズレてる人々が山程でてくる
こういう人をインタビューして記事にする生活をしながら、何かに苛ついて悪態をついて、人々を怒らせたり死にたくなったりしている
死んだ妻への愛が忘れられず、妻がいないことに絶望し続ける
悪態と言ってもそれがとても楽しい。イギリスだなあっと思う。
一番面白いのはシーズン1で、徐々にテーマが重くなってく
重くなるとはいえ若干でしかないが
ピークはシーズン2の5話目で、どうしたらこんなにひどい底辺の晒し上げみたいな話がかけるのか、ブリカスと呼んで差し支えない所業だ
根本的に底辺社会を侮蔑してる感じがするんだけど、そういうのが本当のUKなのかもしれない。その上で人生には意味がある、みたいなメッセージを送ってくるのだけれど、全然嬉しくない。
散々底辺ワーカーを吊し上げた後だと、愛とか生きがいとか言われても、どの口で?としか思えなかったりする
そこが最高なんだよ、アメリカの商業主義とは一線を画する作品なんだよ
シリーズ全般にUKの有名音楽が流れるのもいい
色々売れてる有名作品を見てきたけれど、自分がそういう超大衆的作品を望んでいるんじゃないということも理解できた気がする
こういうちょっとした皮肉な日常というのに感動する年齢になっちゃったんだなあ
20代の自分だと面白いと思えなかったかもしれない
でも普通の作品に飽き飽きした年齢なら染みるかもしれない