フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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小説「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」は大傑作古典SF

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だいぶ前に購入して積ん読していた電子書籍を読み始めている。SF系をまとめて購入した時期があって、これもその時買ったものだったんだけど、「サイバーパンク2077」と「エッジランナーズ」のおかげでSF熱が発生して、「ニューロマンサー」に続いて読了。

 

ニューロマンサー」を読んだ時は文章を読む力が落ちまくったんじゃないかと凹むぐらいにわけわからん描写が多かったのだけれど、この作品は読みやすい上に面白くて作者の違いはやっぱりあるんだな、と感じた。端的に言って大傑作。さすがに有名な作品なだけあっておもしろすぎる。読み終わるんのに4日ぐらいかかったんだけれど、中盤の偽物の警察署が出てくるあたりから読むスピードが加速した。

 

アンドロイドを追いかけるバウンティハンターとデッカードという名前を聞いたことあるなあ、と思って読みはじめたが、映画「ブレードランナー」元ネタだと途中で気づいた。ネタバレを避けるためにネットで検索したりはしなかったがあとがきにもちゃんと書いてあった。

 

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2018年に映画の感想を書いていて、10点満点中5点という辛口評価である。あんまり楽しめないと書いていた。原作の小説と映画はかなり違っていて、原作を元ネタにした同人映画のような雰囲気。映画ではバウンティハンターではなくブレードランナーで、ネクサス6型をレプリカントと言い換えている。原作小説はアンドロイドと人間の境界について様々な角度から書いているように見える。アンドロイドをテストする質問や彼らの細かい人間との違い。それに映画にはいなかった人間に阻害されるスペシャルという人間の存在は大きい。スペシャルとは言い換えれば知的障害者とかそういったものなんだろうけど、人間にぞんざいに扱われる人間というものが、物語のスパイスになっている。イジドアというスペシャルがアンドロイドに親切にされて、人間とよりもうまくやっていけるんじゃないかと感じるところなんかは胸を打たれる。

 

人間そっくりに見えるアンドロイドが、存在自体珍しくなったクモの足を、何も感じずに切断していく描写なんかは、人間との違いを端的に描写していて、そしてその振る舞いに絶望するイジドアの気持ちも理解しやすい。

 

アンドロイドだとわかるや直前まで人間として扱っていた相手を、「それ」と呼ぶようになるのも、銃で始末できてしまうのもバウンティハンターの業のようで、デッカードはどんどん病んでいってしまうのも楽しい。技術的な部分よりも人間そっくりのアンドロイドと人間という存在のグレーな関係性に注目した内容。生き残ろうとするアンドロイドの人間っぽさ。あらゆる生物が珍しくなった地球。どれもこれも古典SF的ではあるが、テクノロジーにフォーカスしていないので今読んでも色褪せていないように思えた。

 

ディック作品は「高い城の男」を何年も前に読んでパッとしないイメージだったが、この作品はSF初心者向けの大傑作だ。