フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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ミニマルビジネスの忘備録

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まとめ

 

・来年からはwebプログラマに戻る

プログラマは引退したいのでビジネスは継続する

・忘れないうちにメモる

 

 

今年はプログラマとしてほとんど仕事を受けなかった。なぜかと言うと下請けの作業が嫌になったからだ。コロナの騒動も相まって、自分でコントロールできる仕事をやってみる、ということにチャレンジをした。結果としてはうまくいかなかった。

 

下請けを使い、自分でも作業し、製品を作り、告知を行い入金を確認するまで、おおよそビジネスにおける工程を経験した。その内容と注意点をメモしておきたい。正しかったこと間違っていたこと。

 

【良かったこと、正しかったことリスト】

 

■ミニマルスタートは100%正しかった

銀行や家族から借金をせずに自分の手持ち資金だけでできることを行うというのは絶対的に正しかった。というのも撤退が容易で失敗しても誰かに詰められることもない。利益は下請け費用と自分の生活費と税金というシンプルな分配で済む。これははてブやネット記事でビジネスの失敗者たちの体験談を読みまくった影響だろうと思う。人間関係は壊さないどころか、家族からも友人からも僕は未だにwebプログラマだと思われている。結果としては自分の貯蓄を少しずつ減らしていった半年で済んだ。下請けにまかせた作業の費用以上の売上はあったが、一進一退を繰り返し、一退の幅のほうがでかくなったので一旦やめる判断をした。

 

■名前を売ろうとしないことは正しかった

ネットはなるべく匿名であるべきという、古くからの掟を信じる僕は、ビジネスやってまーすみたいなことをTwitterやこのブログで告知して、壮大に滑るようなリスクを背負う気はなかった。意識高い人たちが名前を売るのに必死になっているのを見て、よくそんなリスクを背負えますね、と考えていたので、僕はこっそりと製品作成に勤しんだ。頑固なラーメン屋の店主よろしく、わかる人はわかるし、いいものをつくればファンはつくものである、というスタンスだ。おかげで体面を気にして一時撤退さえできないというプレッシャーはない。

 

■下請けに依頼する経験が得られた

身銭を切って作業できる下請けに依頼するという経験は素晴らしいものだ。依頼メールの一つから支払いと契約、納品に至るまで自分に責任が降りかかり、製品の良し悪しを左右するという生の体験はやってみないとわからない。おかげで下請けを使うさいのリスクとコントロールの知見が得られた。

 

■応援メッセージを受け取った

あなたの製品は素晴らしいです。

次も期待していますというメッセージがもらえた。

どれだけ小規模な活動にもファンがつくという確信を得た。

 

■挑戦することそのものが良かった

webを利用して売買をするのはやってみないとわからない事が多い。撤退するといっても、半年以内に再活動するつもりでいて、そのときは100%成功するセオリーと予算を持ってやるという自信が得られた。プログラマに戻っても次にチャレンジするための作業は続けるので、未来の可能性の一つが手に入ったということが大きな財産だ。

 

【ダメだったこと、失敗したことリスト】

 

■新製品とは販売後24時間後だけつけられる価値だ

得た最大の教訓がこれ。

作るものが万年筆であれ、ソフトウェアであれ、食品であれ、新製品という言葉が通じるのは販売後24時間が限界だということ。どんな商品にもアンテナが極大のファンが存在しており、僕が作った製品にでさえ、あっという間に購入してレビューする人がいるということだった。しかしながら、そういうアーリーアダプターは数が少なく、彼らのお眼鏡にかなうかどうかがビジネス成功の第一関門になるということだった。

 

そのため新製品というラベルを貼るなら極限までハイクオリティでリリースするべきということだ。僕はここで大いに失敗した。ソフトウェア業界にいた僕は多少のバグはあとから直せばいい、という考えに毒されていた。値段をつけた中途半端な製品を作ってしまうと、後でアップデートした商品をだしても後の祭りだということだ。限界まで妥協すべきではないし、アーリーアダプターのファンを満足させなければならないクオリティこそが必要なのだ。1週間後も新製品と呼ばれることはない。アーリーアダプターは1日目で購入して他人にすすめたり、語ったりする価値があるかどうかを判断してしまうのだ。ここで妥協してはいけないということは僕の胸に刻まれた。

 

■指標を立てても裏切られる

何度か製品をリリースするうちに売上予測であったり、その根拠みたいなものがでてくる。ネット販売するならどの媒体でもそうだが、お気に入りだとか、いいね、みたいな機能がある。ここではブクマというものがあるとしよう。ブクマ数は販売数ではない。僕の製品は仮にブクマ数が200であっても実売は350ぐらいあるというものもあれば、ブクマ数150あっても、売上は50ほどしかないという製品もある。

 

そこで販売指標を立てた。予告をだしてアーリーアダプターがブクマする。そうするとブクマ数ぐらい初日に売れて、その後販売を続けるとどんどん差がでてくるものである。もしイレギュラーがあっても、ブクマ数の半分くらいは売れるものである、というような計算をしていた。

 

そして僕は今までで最大の予算を取った製品を先日リリースした。結果はブクマ数の3分の1以下の実売数であった。まだ今後も製品自体は売れていくだろうが、それでも最初の1週目の売上が、あまりにも指標から離れていて、結果として僕は失敗を受け入れざるを得なくなった。売上数自体は今までよりもはるかに高いが、コストの回収を考えると期待はずれの数値であった。これが僕をwebプログラマに戻す決意につなげた。

もう一度大きめの予算をかけることはできても、また失敗した場合、立ち直るのが難しいだろう。余裕があるうちに撤退して、しばらく冷静にマーケットを見なければならないと考えたのだった。指標は参考にしかならないという教訓も得た。

 

■下請けは遅れる

プログラマとして納期の延期する企業は散々見てきた。にもかかわらず下請けが期限以内に納品できないことを考慮に入れていなかった。できる、といったんだからできるものであるという謎の信頼を寄せていた。11月の末にリリースしたい、だが下請けが一部納品が遅れるという。僕はここで失敗した。その納品の一部を利用しないままに、リリースを強行したのだ。おそらくこれが製品の売上減少につながったと思う。僕はここでリリース延期をしてブラッシュアップを図る雌伏の時を過ごすべきだった。だがリリースを済ませたいという欲望に負けて帳尻をあわせた。下請けには怒らなかったし、お金もきちっと払う。なんの責任も要求しなかった。遅れている部分がなくても成功するだろうという傲慢さがあったからだ。遅れたときの判断はどうするかを事前に決めて置かなければならないという教訓を得た。

 

■評価が低いから売れないというわけではない

僕が作った製品で一番売れたのは、もっとも評価が低いものだ。購入した人ができるレビュー機能みたいなものはどこにでもある。もっとも★が低いにもかかわらず、もっとも金になった製品があって、それが意味するところはレビュー制度と金儲けの乖離である。つまり高評価を狙って製品を作るというのは必ずしも成功につながらない。どんな評価をつけていようが、欲しい人は買う需要というものがそこにはあったのだ。

 

■成功体験に引きずられる

最初に出した製品が、★評価が低いが儲けになった。そのため僕にとってはそれが理想的な製品になってしまった。しかも割引もしなかったし、今でもポツポツ売れる。はっきり言って僕の製品は値段が高い。それでも買う人がいるという確信を得たため強気の価格を出し続けた。だが同じぐらいの実売数を得られずにいた。何が原因か、そしてなぜ最初の製品が売れるのかわからない。評価だけ見れば他の商品が売れてもいいはずだ。それを見極める必要があるが、その製品の売れた理由を推測して要素を取り入れても売れなかったりする。考え方を変える必要があるかもしれない。

 

■値付けなど、売りたいように売るという欲望がある

製品の値付けは非常に難しい。高すぎては売れず、安すぎては儲けにならない。値段を500円か1000円か選択できたなら、誰だって1000円で売りたいと思うだろう。だがそれで売れるのかどうかは十分に検討される必要がある。ニッチ製品で勝負する場合はクオリティと、尖り具合が必要だったりする。なかなかないから高い金を出しても買いたいというわけだ。僕の製品は平均的に高い。それでも買う人は買う。だが売れ行きには差がでる。これは需要供給の何かがあるのだが、未だにわかっていない。需要がないのに高めに出しているということもあり、適正だったこともあるのだろう。これはマーケティングの分野の知識が必要そうだ。

 

■投資は思った金額の5倍は必要

小さく作るというのは理想だ。だが下請けも含めて金をかけると良いものができるという明らかな事実がある。ニッチ製品は、クオリティに金をかければそのマニアが高額でも買ってくれるという確信も得た。だからプログラマに戻って金を稼ぎながら時間をかけて製品製造をするという形に切り替える。もちろん儲けたらそちらに切り替えればいい。そのため僕に必要なのは金ということになる。ミニマルビジネスであろうと金のちからは甚大である。投資金額がある程度を超えると、クオリティの閾値を超える。それが大きく儲けるための需要の核心になっているということがわかった。

 

 

退屈な生活を脱して、もしかしたらお金に余裕のある生活ができる上に、企業に命令されて生きなくてもよいかもしれない。そう思うと手持ち資金で売れる製品を作ることにチャレンジするのは悪くないものだ。未来の展望が開けるんだから、破産しない程度に経験をためていきたい。

 

難しいのは需要を見極めることだ。自分の製品の中でさえなんでこれだけが売れているんだろう、みたいなものはある。その核心をモノにするのは難しそうだ。