約1時間の3話構成。オーストリアの田舎の少年だった時代の振り返りから始まり、ボディビルダー時代、俳優時代、カリフォルニア州知事時代を振り返りながらアーノルド・シュワルツェネッガー本人がコメントしたりする。
やはりドキュメンタリーはいい。シュワルツェネッガー、日本ではシュワちゃんで通っている。最近は大ヒット作もないので、ターミネーター2とネットでミームになっているコマンドーの俳優として有名だと思う。
ことなる3つの部門でほとんど頂点に立った男なので見ごたえがあった。1話目少年時代では、母親と父親の人となりについて語る。父親は世界大戦経験後、地元の警察署長。今どきで言えば虐待する父親。ベルトでぶん殴られたりしたと。ただその当時はどの家もそんなふうだったという。そんな父親や実家から離れたくてアメリカに憧れ始める。雑誌の表紙になっていたヘラクレスという役柄のマッチョ俳優を見て衝撃を受け、トレーニングを始める。オーストリアの田舎にも山小屋でトレーニングする集団がいたそうで、そこに混じって鍛え始めて、やがてボディビルの大会に応募したり、軍役についたりしてとにかく家から出ることを模索。大会で評価を受けたのでアメリカに渡米する権利を得たという流れ。そこからはアメリカでひたすら大会でトップを取るためにトレーニングを続ける日々。グラップラー刃牙でも有名なビスケット・オリバの元ネタのセルジオ・オリバが当時の最大のライバルだったという。
ボディビルの頂点に立ったときはまだ20歳前後だという若さ。かなり早い段階で大成功していたというのは意外。そこからはボディビルの関係者から経営を学んだり、悠々自適な暮らしをしていた。何度も大会でトップに立ち目的を見失ってから俳優を志すようになったという流れで2話目は俳優メインの話。
5年間はほぼ役者の仕事なしだったが、ボディビルのドキュメンタリー映画で脚光を浴びて一躍スターになったが、まだ日本では知られていない。そこからアクション俳優へとシフトしていく。同時期の最大のライバルはシルヴェスター・スタローンでコメント役として出てきてる。とにかく俳優として成功して、ターミネーター2で人気の頂点に。頂点を極めると他の分野に興味がでるらしく政治の世界へシフト。そこからスキャンダルや離婚、議会での仕事ぶり、そして現在へ。
ドキュメンタリーを見るとわかるんだけど、とにかくエネルギッシュ、バイタリティお化けで努力家。さらに言えばコミュ力の塊で誰とでも仲良くなり、ジョークを言い楽しい。いや、もうね、無尽蔵のエネルギー・ターミネーターですよ。ターミネーターの監督で40年来の友人ジェームズ・キャメロンもコメントに多々でてくるけれど、監督のほうが年下なんだよな。
80年代の映像を見ると、まさしく古き良きアメリカみたいな世界が見える。クソデカ車のハマーを売り出したのもシュワちゃんで、ヒット作のほとんどで常に葉巻を吸っていたのでそれも流行ったそうな。筋肉マッチョで何もかもデカいアメリカサイズにこだわる。00年代のシュワちゃんは政界進出するが、内容は現代政治の先駆者みたいな要素がある。
政治家シュワルツェネッガーは、環境問題に取り組んで二酸化炭素排出も25%削減に取り組み、太陽光パネルをバンバン設置するような政策を推進していて左派っぽい。一方で立候補した途端、シュワちゃんからセクハラを受けたという女性が大量に現れて反発運動が起きる。これもme too運動の先走りっぽい。とりあえず謝罪ですんだのはレイプまではしてなかったからだろうか。選挙運動でもLady Boy(オカマ野郎)という言葉を発して叩かれたりしている。これもトランプのアメリカみたいな動きだ。
こう見るとカリフォルニアは10年代後半〜20年代のアメリカの動きを先んじてた。環境問題に取り組み、男女のセンイシティブな問題が浮き彫りになっていた。エネルギーあふれるマッチョの代表シュワちゃんに的なアメリカの反動が今のアメリカの分断と呼ばれるものなのかもしれん。ドキュメンタリーにもでてくるがシュワちゃんは80年代にアメリカ市民権を得ている。オーストリアで生まれたが心はアメリカ人だ、という本人のコメントの通り、実際にシュワちゃんを生まれながらアメリカ人だと思っている人の方が多いんじゃないかな。キャラクターが完全にステレオタイプなアメリカ白人だし。
そんなシュワちゃんにも老齢がやってきて、本人も肉体は現状維持で精一杯だと言う。鏡を見ると胸の下あたりにシワができていて驚くと。人生は短すぎると発言し、死に近づいていることを感じているようだ。日本では存在感があるわけじゃないけど、今でもウクライナ戦争だとかにショート動画をインスタとかで出したりする。コロナのワクチンも積極的に接種してアピールしていたようだ。75歳でもバリバリ働こうとしていて、車も運転するし動物も育てるし、元気いっぱい。
こういう姿を見ると100分の1のエネルギーもない自分が嫌になっちゃうね。ドキュメンタリーとして秀逸だし面白かった