随分長い間、積読していた。
ようやく読み終えた。21世紀以降の日本のSF作家では一番有名なんじゃないかな
期待して読んだんだけれど、何ていうか村上春樹とラノベの設定と日本のネット空間で言及されやすい諸々、日本のアニメやゲームに影響を受けまくった作品、といった趣。基本的に主人公の内面の描写、ミッション遂行時の行動描写で締められている。
いいところはやたら読みやすい。翻訳SF作品と違って、ネイティブ日本語の作品がこうも読みやすくなるとは思わなかった。描写が村上春樹っぽいかな、と思わせるけど、最近の作品は何だか村上春樹に思えるから、自分の脳みそが鈍感になっているんだと思う。
とはいえ、ゲーム・アニメでひたすら使われ続けたであろう、人間を殺すことについての内省的な独白ばかりで読んでて辛い。読んでてシンジ君が出てきてしまう。ただ読みやすいばかりでなく、流し読みしててもストーリーを追える構成なので気楽にサラサラ読んで良い。
中盤に出てくる虐殺の文法の正体が出てくるあたりは、ほぅ!と感嘆符をつけたくなったが、その後結局は、DNAやら過去の時代の習慣やらが原因だとか言い出して、何かネットで見たな、みたいな気分になった。
ナチスを当時の人間が支持したとか、パブロ・エスコバル、フセイン、マーフィーの法則、ケビン・ベーコン・ゲーム、グラフ理論、地獄はここにあるというセリフ、レミング現象、デウス・エクス・マキナ。こういった差し込まれる例えが、ネットで見たみたいな内容でなんだかなあ、と感じてしまった。
発売日から考えると元ネタが虐殺器官、という可能性もある。虐殺器官という作品のおかげでそういうものの例えが日本語ネット空間に広がったのかもしれん。とにかくもっと50年ぐらい時間が経ってから読まないと、既視感がありすぎて読んでてため息が出てくるんじゃないか。もしくは発売日に読んでいたら感想ももっと違ったかもしれない。
ハーモニーの方が評価が高く、購入済みなのでそちらも読んでみようと思う。虐殺器官は日本のネットに入り浸っていると既視感だらけなのでおすすめはできないかな。中学生ぐらいに読めば面白いと感じるかもしれない。