フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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書評「幼年期の終り」アーサー・C・クラーク

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アーサー・C・クラークの名作中の名作。SFのマスターピース。金字塔。

 

 

電子書籍をセールのときに買ってから2年も放置していました。

名作と問われれば名作。おもしろいかと問われればおもしろい。

さすがにオールタイムベストSFに選ばれることもある作品だと思う。

 

導入は人類の遥か上を行く科学力を持ったオーバロード(上帝)と呼ばれる宇宙人の接触から始まる。空を覆うとてつもないデカさの飛行物体が突然現れてからの人類とオーバーロードの関わり。オーバーロードは最初姿を見せずに、一部の人類の担当者と飛行船の中で壁越しにやりとりをしつつ関与する。目的不明。見た目も不明。

 

僕は最後までオーバーロードは姿を見せないんだろ、と思っていたが序盤から中盤にかけて普通に地球をウロウロし始める。意表を突かれた。オーバーロードへの好奇心から出し抜こうとする人類と、簡単に対応するオーバーロードの話が続く。

 

オーバーロードの予定通り、人類の前に姿を見せ、圧倒的な力で人類の歴史を変えてしまう。人類史上もっとも幸福で平和な時代が来る。どうして平和になったかという描写がおもしろく、個人的にはそこがピークだった。

 

後半からラストまでは、なぜオーバーロードが地球に来たのかという目的が判明して、人類の幼年期の終りが始まる。完全無欠に思われたオーバーロードも実はそうでもなく憐れむべき理由があったのだね。いってしまえば、オーバロードにも悲しき過去があった。

 

この顛末は意外すぎたが、最後まで面白く読めた。名作と呼ばれるだけあってわかりやすい。そして現代作品に影響与えまくったんだな、というのもわかる。ネットでさらっと検索すると、エヴァンゲリオンの元ネタのひとつだろうと言及されていて、ああ、確かにと思った。オーバーロード人類補完計画的なことやってるな、と言われればそう。SF初心者向けなのは間違いない。

 

ここからは作品と関係ない話。

この作品はそう長くないし、面白いのに読了に1週間はかかった。Kindleの表示で1日10%ずつ読んでいく。最後の30%ぐらいは一気に読んだけれど、かなり時間がかかった。

13歳ぐらいから色々と小説を読み始めたんだけど、僕は読書に特別な希望を見出していた。たくさんの偉大な作品を読めば、僕の将来も良いものになる、富と名声が相応に手に入るという確信じみたものがあって、その希望じみたものが読書への集中力を高めた。

 

時は経ち、ほどほどの未来がやってきて今や40手前。今更名作を消化しまくったとして輝かしい未来があるかと言われればそんなこともなく、読書はエンタメでしかないという絶望の中、読書をしている。

 

ブラウジングで時間を消費するよりは良いだろうと思って読んでいるが、10代でこの本に出会っていれば、もっと理系分野に興味を持てたのだろうかなどと考える。昔は明治文学とロシア文学やフランス文学あたりを読んで、SFはほとんどスルーしていた。主に新潮文庫の100冊が僕の読書範囲だった。

 

「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」や「ニューロマンサー」、「星を継ぐもの」を読んだのもここ数年、30代に入ってからだ。もっと早くに読んでいれば、星や物理や光だのに興味を持って、人生の方向性も変わったのかなあ、などと思わずにはいられない。SFは理系の知識があればより楽しめる描写も多いからだ。

 

ま、今となってはもう遅いだろうが。