シェイクシャックというハンバーガー屋が梅田にできた。少し前から知っていたのだが、まだ行っていなかった。これはハンバーガー屋のくせにやたら高い店だ。そんなにハンバーガーが好きなのかと言われれば実はそうでもない。マクドナルドで十分満足できる。この間そこに行ってきた。理由はノスタルジーからだ。ロンドンに初めて到着して、あちらこちらをひたすら歩き回って、何を食べればいいんだかわからなくなった後、とりあえず入ったのがシェイクシャックだった。その記憶が呼び戻されて、大してうまくもなかった上に高いハンバーガー屋に赴いた。
一つのハンバーガが800円とかするのだ。そして飲み物も500円。フライドポテトのバーベキューソース付きの大きいほうが700円とか。僕は昼食に2000円も払って、しかも特に美味しくないのだ。微妙な気分になりながら、外に出る。梅田は相変わらず人が多すぎで、HEP FIVEの前では献血のトラックが止まっていた。過去に献血はしたことがあった。たまにはしてみるかと思う。
こんな風に思うのも、多分今すごくノンストレスな環境で暮らしているからだろう。今までに考えられなかったほどのホワイト案件を受けて、客先からの評判は良く、定時帰り、職場も家からそれなりに近いという、前世でどれほど徳を積んだのかわからないほどの待遇だ。前回請け負った依頼とは打って変わって天国レベル、イージーモード、地上の楽園のようになっていて別の会社からの依頼を引き受けたくなくなる。そんなわけだから、血液の少しぐらい分け与えて社会に貢献してもいいかなあと思うのだ。
嘘ついた。
血を抜いて新しい血液が作られるのは健康にいいとかいう怪しい知識があったのと、血液検査の結果を送ってくることを知っていたので、それ目当てに受けたのだ。
阪急のとあるビルに献血ルームがある。外の献血トラックは4時には受付が終わってしまうので、その献血ルームまで向かう。そちらは6時まで受け付けている。小綺麗な部屋にたくさんの看護師がいる。献血なんて誰がやるんだと思っていたら結構な人がそこにいた。終わるまで1時間ほどかかりますが、と断りを入れられた。大盛況じゃないか。こんなにいるなら貢献せんでもええかな、と思ったがせっかくなので付き合うことにした。
ドリンクは飲み放題、クッキーが食べ放題。血圧図ってひたすら待つだけ。一度血液の鉄分濃度を図るために少量の血を抜かれる。それで400mlか200mlを選べるが、だいたい400mlお願いしますと言われる。僕も気にせず400ml抜いてもらった。
献血する専用のリクライニング椅子というか、実質的にベッドみたいなところで寝ながら行われる。それぞれの席にテレビがついてあり笑点を見ながら血が抜き終わるのを待つだけ。血を抜く注射針は太いからか、結構痛い。だがそれよりも、抜いている最中に注射針を刺している位置が振動する時があるのだが、まるで血液が逆流でも始めるんじゃないかという震えにめちゃくちゃビビる。
10分ぐらいかは寝ていた気がする。途中で先輩看護師が後輩に採血機械についたディスプレイについてあれやこれやと言い出した。後輩はいつも通り操作しましたなどということを恐る恐るいう。ああ、これが女ばかりの厳しい世界なのかと辛くなる。僕がじっと見たからか、隣ですみませんと謝られた。
そうして400mlの血液はバンクに届けられるのだろう。それから数日経っているが特段健康になった気はしないし貧血ということもない。あとは僕の血液が健康だという証明書が届くのを待つばかりだ。