フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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映画「日本のいちばん長い日(1967)」想像できないかつての日本

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寝れないからアマプラで名作と言われる「日本のいちばん長い日」を見た。

2015年のリメイクバージョンもあったんだけど、アマプラでの評価は圧倒的に旧バージョンだったのでそっちを見ることにした。

 

非常に興味深い作品だな、というのが感想。

まず最近の邦画と違って女性が全くと言っていいほど出てこない。鈴木貫太郎の自宅の女中さんと戦闘機が出撃する時日本国旗を振って見送る大量のモブぐらいにしかいない。

 

さらに導入部分の敗戦に至るまではナレーションであっさり済ませ、そこから玉音放送に至るまでのストーリーに2時間半かけるという映画構成は、2020年においては許されない構成だった。視聴後にリメイク版の予告編をyoutubeで見ると旧版で視聴したのは間違いじゃなかったかな、と思う。なんせ旧版はテーマが絞られていてエンタメ感が薄いようで、それが異色の作品っぽさを出している。

 

この作品の特徴は時代柄なのか、昭和天皇の顔が出てこない。最後の玉音放送で声が出てくる以外は内閣の人たちが裏に行ってお伺いをたてるという演出だ。その当時はまだ神格化されていてタブーだったのかもしれない。リメイク版ではガッツリ出ているようだが。

 

本筋としては、降伏を受け入れようとしない軍事関係者と、本土決戦は不可能と進言する農水省やらの文官達とで揺れ動いて紛糾する会議と苦渋の決断をする阿南陸軍大臣、降伏を知って本土決戦に持ち込むため宮城事件を引き起こす青年将校たち、玉音放送するための準備に奔走する外務省と宮内省で場面が変わる。

 

僕としては三船敏郎の熱演よりも、青年将校たちの気が狂ったような本土決戦願望が現代人としては全然理解できなくて、戦後75年も経てば人の考え方は全く違うもんだなああ、そりゃあ戦後の平和教育受けているからねえ、と嘆息するよりなかった。当時の軍人たちの中には敗戦を受け入れるのは恥、そうするぐらいなら戦って死ぬべきと思う人もたくさんいたという歴史的資料なんだろう。

 

役者の配置として軍人たちは苛烈で話し方も穏やかでないが、宮内省だとかは品のいい柔和な人らが演技をしていてこれも意図的な演出なのだろうけど楽しめた。宮内省とか放送局の職員とか外務省で詔書を書く人たちとかはすごく現代人っぽい、令和の官僚とそう変わらない気がする。

 

すでに戦争終結後随分時間が経って生まれた僕にとっては、軍人たちだけがフィクションの世界の人のような感覚があった。浮いているというか、理解不能というか。

 

宮城事件の青年将校たちも反乱失敗を自覚すると拳銃自殺するんだけど、最後の最後までわけわかんねえ精神状態だなあと思った。そもそも宮城事件自体が、いきあたりばったりで軍の上官を説得するも断られて斬り捨て、偽の報告で東部軍を動かそうとしてバレて、最後は檄文をバラまいたり(いつ書く時間があったのか、という疑問もあったがスルーした)皇居?近くの広場で拳銃自殺という、なんとも言えない気持ちになった。宮内省の建物に銃乱射したり、玉音放送レコードの捜索としてあらゆる棚をひっくり返したり乱暴すぎワロタ。

 

支離滅裂すぎて笑えるけど、これが史実ベースなんだから事実は小説より奇なりと言ったところだろう。エンタメって感じはしないけれど、当時の日本軍の空気感は俳優たちが戦争参加者が多数いたので本物なんじゃないかな、と思う。どちらかというと貴重な資料といった趣。

 

なので日本帝国の残り香をかぎたくなったら視聴してもいいかもしれない。

 

7.5点/10点

 

日本のいちばん長い日

日本のいちばん長い日

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video