フロイドの狂気日記

時は流れ、曲も終わった。もっと何か言えたのに。

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デザイン盗作・「ルックバック」の藤本タツキは天才ではない。あるいは少年ジャンプの才能枯渇問題

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ルックバック - 藤本タツキ | 少年ジャンプ+

 

内容は楽しく読めたんだけど、これに対しての大絶賛コメと天才大合唱が不気味すぎる。それにプロ漫画家(超一線級のSクラスではない)までがTwitterで心を動かされたとか言っている。だいたいそういう人らのヒロイックな自虐と謙遜は見るに耐えない。そもそもなんだけど、この作品以外に素晴らしい最近の作品がないのかって話で、世の中を見渡せば天才と呼べる人と作品はいくらでもある。にもかかわらずピンポイントで心に刺さってるのは、その人らが観察力と意識のない平凡なそれだからでしょう。観察してないから、バズった読み切りに心動かされる。他にもたくさん天才的な作品はあるのに、だ。これ読んで筆折るってんなら毎日筆折らないといけない。まともに色んな作品を読んでいるのであれば、だけれど。

 

作る人はどれだけ天才が世の中に溢れていても創作活動をするわけで、作中の京本がそんなふうに書かれていて、作者自身も山程絵を描いてきた人であることがわかる。この作品は修練の結晶そのものだと思う。ところが読んだ外野は、天才の一言で片付けようとする。バカバカしいなあと思う。あと全然天才じゃない。

 

■少年ジャンプの才能枯渇

毎週ジャンプをiPhoneアプリで購読している僕はジャンプ界隈の話題もネットで読むけれど、ファンから聞こえるのは読むものが少なくなったということ。割と頻繁に起こる少年ジャンプの才能枯渇問題があって2021年はかなりやばめの暗黒期に入ったと言われている。少し前までは、「鬼滅」を筆頭に「約ネバ」「ハイキュー」「チェンソーマン」といった中堅以上のヒット連載があって今でも人気の「ヒロアカ」「呪術」「Dr.ストーン」それに何だかんだで売上の大きい「ワンピース」と鉄壁の陣営だった。ところが上記の内4作品は円満終了していて、今では打ち切り同然だと言われる作品が中盤以上まで埋まってしまっている上、人気の筆頭に躍り出た「呪術廻戦」は休載中である。「逃げ若」「サカモト」「マッシュル」でどこまで埋め合わせできるか微妙といった具合。

 

何が言いたいかって言うと、こういう状況だから一部のファンが過剰に持ち上げる作家になったってわけだ。作風も映画風味で意識高い系を引き寄せやすい。

 

■デザインの盗作

今ジャンプで大人気の「呪術廻戦」と藤本タツキの「チェンソーマン」には共通点がある。それはオリジナリティの不在だ。僕は両方とも電子書籍で全巻購入しているけれど、オリジナリティはすごく弱い。面白いけれど努力してジャンプ漫画の様式をコピれました、みたいな漫画だ。

 

チェンソーマン」は映画から拝借しすぎで、「呪術廻戦」は漫画から拝借しまくっている。オマージュとパロディとパクリの境界線は難しいけれど、特に「呪術廻戦」にはかなりシビアの目線が向けられていて、ソレが原因で休載しているとか噂されている。これはゴシップだけど、呪術は作者のどうでもいいクソムーブやコメントのおかげで厳しい目線に晒されている。今後は得意のネタ拝借が難しいと思うから展開がどうなるか不安だ。

 

あんまり叩かれてないけど「チェンソーマン」の映画拝借もひどくって、呪術のネタ元と違って拝借先がマイナーだから怒られずに済んでいる。例えば最初の強敵「サムライソード」のデザインは、ヘルボーイのクロエネンのパクリだと指摘されているし、銃の悪魔は弐瓶勉「アバラ」から露骨にとっている。物語終盤の本当のチェンソーマンの姿にも似ている。

 

銃の悪魔や真・チェンソーマンそっくりなアバラの黒ガウナ

新装版 ABARA』(弐瓶 勉)|講談社コミックプラス

 

 

サムライソードまんまなクロエネン

https://pbs.twimg.com/media/EWwTJwaXQAE7vGO.jpg

 

B級映画の「シャークネード」「ヘルボーイ」だとか割とマニアックな漫画「アバラ」からパクってっから怒られてないけど、この人はもともと展開やキャラデザにオリジナル力がない。映画の雰囲気を漫画に持ち込むっていうのが評価されているけど、画力を努力で上げまくって少年誌ベースに仕上げたことが成功要因でその他は割とひどい。こういうのってモブキャラぐらいならいいんだけど、肝心なボスに使ってへーぜんとしてるわけで恥知らずなんだよな。

 

チェンソーマンのレゼ編」が物凄く良くて、本当に映画っぽいし切なさがあって、その他もところどころ短編的な部分は良い。でも長期連載に必要な構成力が低くて、マキマ戦とその前後は意味不明な決着でマキマの過剰な能力に対して、強引に決着した感があり、得意の浮遊感や余韻もない終わり方をした。なんでチェンソーがボムより強いか、とか食べたら存在を消せるのか、みたいなのはノリと雰囲気でごまかした。全11巻の内ピークは「レゼ編」のみ。あとは「ゴーストとの決着」「アキ編」がそこそこのおもしろさで、ジャンプの頂点にはなれないぐらいってところだ。他にはギャグセンスも良い。

 

「呪術」しかり「チェンソーマン」しかり、演出とアイデア拝借がうまい人達を天才とは呼ばんだろ、と思うわけです。僕は両方とも購入してますよ?そういう細かいところを気にしないで読んでて楽しめりゃあいいぐらいの感じで見てるからなんだけど、やれ天才だと持ち上げてるのは違和感ありありなわけですよ。両作者はリスペクトしあってる風なところがあるけれど、ジャンプ5-6番手ぐらいでそこそこヒットしてりゃあいいレベルでしかないと思うわけです。こういう人たちが漫画描いてても全然いいけど、過剰に持ち上げられてスタンダード化してほしくないなあと思った。パクリがスタンダードとか絶対嫌でしょ。

 

■ジャンプの天才

本当の天才・荒木飛呂彦だって映画からのアイデア拝借があって(例えばメメント)それでもデザインセンスは一級品であり、紛れもないオリジナルなんですよ。それに複雑な能力バトルを昇華させて、ジャンプのテンプレを作った漫画家の一人だと思う。

 

冨樫義博の全盛期なんてのは本当に天才で、「幽遊白書」はひとつひとつの章が印象的で、画力、セリフ回し、ストーリー展開や頭脳戦に至るまでネタ拝借せずにオリジナリティと画力と構想を成立させている。「レベルE」の短編を作る能力、さらに「ハンターハンター」の「グリードアイランド編」はMMORPGを主体にして破綻しないで書ききったし「蟻編」は長期構想だが高度な社会性と切ない余韻を残す(クソほど休載しているけど)

 

スラムダンク井上雄彦も天才だろうな。画力は超一級品だし、物語の進め方も試合のひとつひとつにハズレがない(NBAの写真トレース問題はある)。構図は問題があったかもだけれど、それの動きを絵で真似できるのは超画力の為せる技だし、能力バトルにしないである程度現実的なスポーツに見える形でピークを継続し続けた化け物作家だと思う。努力と天才の書き方も上手い。ジャンプのスポーツ漫画はたいていギャグテイストでごまかしてしまうけれど、そこに逃げないで、むしろ回を追うごとにリアルよりになるのは凄まじいセンス。30巻代に入っても人気爆発を継続させたのも今の作家にはいない。

 

こういう人たちと比べると、演出と画力だけで頑張ってる藤本タツキは天才とは言えない。デザインはパクるし、長期連載には耐えられないストーリー構成能力だし、キャラ設定もギャグ調じゃなければ特色がなく微妙。マキマと岸辺とクァンシみたいな似通ったクール系キャラしか作れねーのか。演出能力に極振りしているようにも見えるが、作品のうまい一枚絵も探せば元ネタの映画がありそうで素直に褒めれない。ただその画力に修練と努力の跡が見えるから、漫画家やめろとまでは言えない。だけれど天才ではない。間違いなく。

 

■パクってもいいが目立つなイキるな

今のジャンプ漫画のトップレベルの売上の芥見下々と藤本タツキは結構ひどい。一番肝心な銃の悪魔とか敵の中ボスのデザインを自分のテイストに昇華できないまま採用しちゃって堂々と出せるってのは編集なにしてんだ。なんで怒られてないかっていうと、「チェンソーマン」がそこそこの売上のまま連載終了したからなんだろうね。これからアニメ化するけども。肝心な漫画とか絵の部分でサクッとわかりやすい盗作していられるってのが、そういうのは天才はやらんだろ。デザインの引き出しやセンスがなくて努力でカバーできないからパクっとるんやろ、と。

 

一方で「呪術廻戦」の方は、ネクスト鬼滅だとか言われてアニメ化後過剰に売れてしまった結果、過去のデザインと構図の丸パクリが話題になった上(ジャンプ漫画だけでなく刃牙とかとほとんど同じ構図で描いたりしてる)。芥見本人が割とヘラヘライキリオタクムーブかまして、言わんでもいいことをベラベラいうからさらにボロカスに叩かれてる。ファンブックやコミックの合間のコメントで「この漫画は既視感の塊」だとか「八百屋は野菜のプロなので漫画でミスっても許してね」みたいな開き直りとも取れるクソコメントばかり言っててアホなわけです。お前もうちょっと頭使えよ、ジェネリックハンターハンターとして楽しめるし、面白い展開もあるんだから、黙ってろよ。あと、ストーリー展開とかみりゃあ、頭の出来がよくないのは皆わかってるから、作者の名前で知能コンプレックス隠せないコメントばっかだしてんじゃねえよ。なんで恥の上塗りするんですか。

 

藤本タツキの優れたところ

ギャグテイストのキャラは全般的に個性的でおもしろい

ギャグは冴えてる

一枚絵のカッコよさ(元ネタがあるかもしれないので警戒するけれど)

映画チックな演出(元ネタ通りに描いている可能性があるので評価が難しい)

 

過去の天才漫画家たちは、ストーリー構成、画力、キャラ個性、デザイン個性、長期連載耐性まで揃っていることを考えると、藤本タツキは努力で一部能力を高めてジャンプの中堅レベルに行けた末端の修行僧だと思う。上の読み切りも、背景や演出は良いとしても、やはりストーリー展開はまあ普通だ。これで筆折るなんていう作家は割と豆腐メンタルではないか。

 

んで、こーいうのがなんで持ち上げられるかっていうと、少年ジャンプに集まる才能が少なくなっていて、プッシュできるタマがなくて、それでもうまく物語をまとめられる藤本、芥見が重宝されるってわけです。編集も普通にわかっているんだろうけど、ない才能を作ってあげられないからNGだせないでしょうね。さすがに「呪術廻戦」は言い訳できなくなってきたので、休載させて今後は編集チェック入るだろうけど。

 

個人的に藤本タツキは天才だって言いたがる人は、天才を知る自分をアピールしているだけだと思う。あとは超弩級レベルの作家に比べれば手頃感があって褒めやすいってのもあるかもしれない。漫画としてそれなりに面白いけど、ひどいところいっぱいあるし圧倒的な能力を持ってないのは、チェンソーマン全巻読めばわかるでしょーよと。

 

もろパクリはやめましょーね

 

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